fc2ブログ
ラッキー
2007 / 03 / 02 ( Fri ) 20:55:47
物語のはじまり―短歌でつづる日常を読んで一番印象深かった歌は
鹿取未放
汝の内に卵保つといへば児はラッキーと叫びぬラッキーであらねばならぬ
という歌です。 女の子は生まれながらにその身のうちに卵子を抱えていると娘に告げると、彼女は即座に「ラッキー」と声を上げた。 そんな思春期目前の娘をまぶしく見つめつつ、これから大人になってもずっと、子を生める性であることが「ラッキー」であって欲しいと母は願っています。 極端な破調には子の将来への不安が感じられますし、「あらまほしけれ」ではなく「あらねばならぬ」と断定したところに、女性が母性を喜べる状況を作らなければならないという主体的な意思が感じられます。 著者自身がこれまでずっと、卵を持っていることをラッキーと思い続けてきていたなら、娘の言葉は当然過ぎて記憶に残らなかったことでしょう。 屈託のない娘から明るく軽く放たれた「ラッキー」は小さな矢になって作者と私の胸に刺さっています。
スポンサーサイト




読書(小説・詩歌) TB:0 CM:0 admin page top↑
<<横割り社会 * HOME * 松村由利子「物語のはじまり」>>
コメントの投稿 














管理者にだけ表示を許可する

 

*Comment  Thank you*
comment
trackback
trackback URL
http://shishono.blog92.fc2.com/tb.php/927-d69bbbf8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
* HOME *