ノーベントの燕尾服は存在するか
![]() 今日はレファレンス実習です。
課題提供者はrandokuさん。
課題は「ノーベントの燕尾服は存在するか」。
【ツール等】
服装大百科事典 (1976年)文化出版局刊
服飾辞典 (1979年)文化出版局刊
【経緯】
まずは民俗学コーナーへ行って服装大百科事典 (1976年)を手に取りました。
「燕尾服」を引くと図(絵)が付いていて、ありがたいことに後ろから見た図もあるんです。素晴らしい!
幸運に手を打ったのも束の間でした。この図、縫い目と切れ目が識別できないのです。
裾の中央に実線で描かれているのが、布を接いだことを表わしているのかベントやスリットを表わしているのか??(縫製を専門にしている人ならこの図を見てわかるかもしれませんが、滅多に針を持たない私には皆目・・・・)
次に工学のコーナーで服飾辞典類に当たりました。
比較的詳しく載っていたのが、服飾辞典 (1979年)でした。
「燕尾服」を引くと「スワロー・テールド・コート」を見よとあります。
「スワロー・テールド・コート」を引くと・・・(読みやすくするために段落わけします)
スワロー・テールド・コート〔swallow taild coat〕 燕尾(えんび)服のこと。夜の第一礼装で、スワロー・テール,イブニング・ドレス・コートともいう。 前部はウエストまでの長さ,後部は膝丈あたりまで垂れ,裾が二つに割れている。 黒またはミッドナイト・ブルーで,ドスキン,カシミア,ドレス・ウーステッドなどの布地を使う。 衿はピークド・ラペルが多い。ズボンは脇縫い目に2本のブレードがついたもので,足の甲にたるみができる長さにはく。 白のピケか絹のベストはシングルまたはダブルのもの,シャツは<いか胸>とよばれる胸の部分を固く糊づけしたもので,コートの袖口よりカフスが2cmほど見え,後ろ衿からもカラーが見えるように着る。衿は衿先が折れた立ち襟である。 このほか,白いキッドかモカの手袋,白のハンカチーフ,エナメルでオクスフォード型(はと目のあるひも締めの型)か,パンプス型の黒い靴,シルク・ハットかオペラ・ハット,ホワイト・タイ,黒の長いウールや合繊の靴下がともに用いられる。 最近の傾向ではスワロー・テールド・コートを着ることはほとんどなくなり,タキシード(略礼装)が変わって用いられるようになっている。というわけでした。 【回答】 燕尾服〔swallow taild coat〕である限り、裾は2本に割れていなければなりません。ノーベントで1本のテールだったら、それは燕尾服に似た新しい衣装です。 【余談】 下線部はなかなか親切な記述だと思います。 ここまで細かく記述した辞典は他にありませんでした。 「後部はウエストからセンターベントが入り」と説明しているものはまだいい方で、「裾は燕尾状」で終わりにしているものが少なくなかったです。 『ベント』や『ブレード』が分からなければ、同じ辞典で『ベント』『ブレード』の項を引けばいいけれど、『燕尾状』は出てきません。燕の尾がどういう形状であるか、世の燕はみんな2本に別れた尾をしているのか、別の辞典(図鑑)を見なければ確認できないのです。 大体『燕尾状』が縫製でどのように表現されるのかを叙述しないならば服飾辞典の用をなしません。 国語辞典なら「燕尾服:夜の正礼装。燕尾状の裾を持つことから」程度の説明でもしかたないですが、こと服飾辞典において「燕尾服の裾は燕尾状」というのは、「ホワイト・タイは白いタイ」というのと同じくらい不親切ではないかと思います。 しかしここまで親切に書いているからこそ惜しまれたのが斜体部 の記述。 「衿はピークド・ラペルかショール・カラーで、拝絹をほどこしたもの」言って欲しかったです。拝絹の光沢のない衿では、夜の正装として台無しです。 スポンサーサイト
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ありがとうございます。 レファレンスサービスが行き届いていて感動です。 やはりお仕事柄でしょうか。 そういえば、最終回の玉木千秋の襟は上部に光沢があって、刺繍が されていたと思うのですが、あれが拝絹でしょうか。 千秋父がお尻部分だけでなく、家族関係に至るまでどう修復されて いくのか楽しみです。 |
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