ホワイエ
![]() ![]() いい奴じゃないか。そう思ってあらためて顔を見てしまった。沢村一樹の甘いマスクに塩を足したような男だ。 「失礼しました。私は副館長の黒岩です。館長からこれをクレマさんに、いえ青木さんでしたね。青木さんに差しあげるよう託っております。1カ月有効のゲスト会員カードです。」 「いや、俺はただの通りすがりだから、会員とか結構です」 「恐縮です。無理でなければ9月1日の防災行事まで、1回でも2回でもいいので、庭仕事を手伝っていただきたいのです。館長は『毎日オープンガーデンだけど、カードがあれば入館してシャワーも使っていただけるから』と申しておりました」 「つまりそれはボランティア園芸活動のための入場定期券ということ?」 「そういう使用法もありますね」(ここでニッコリ)。 ![]() 「館長によろしくって言われた意味がよくわかりました。9月1日まで、お手伝いしますよ」 「よかった。ヘルプ・ミーだけでは、どうにも回って行きませんから、助かります。では会員登録票に記入してください」 滞りなく手続きが終わると、 「うちの入館ゲートは駅の改札と同じ仕組みです。このカードには本日の入館記録がありませんから、本日だけ、壁際のゲートからお帰りください」 そう言って黒岩さんはカウンター内のスイッチを押した。壁際のバーがすっと開いた。入場口と退場口の通路幅は70cm程だが、壁際の通路だけは幅1mくらいある。これなら車椅子でも通りやすいだろうと思う。 スポンサーサイト
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