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和室
2015 / 10 / 08 ( Thu ) 20:52:14
フラウミキコ20150505館長が、ニッコリ笑って席を立った。「ごゆっくり。毎日は無理でも、また来てください」と。

せっかくだから見学しようと立ちあがり、最初に目に入ったのは休憩室だった。
マエストロは休憩室と言っていたが、<和室>というプレートがかかっている。半透明の折戸の持ち手のそばには「病人安静時以外開放」とラベルが貼ってあったから遠慮なく入ってみた。後から分かったが、このライブラリーの内部のドアはすべて開放が標準で、素材はシースルーなのだった。
ドアを一歩入った瞬間、「これが和室?」と思わず頭の中のマエストロに突っ込んでしまった。
畳収納ユニット(高床式ユニット畳)の組み合わせで三畳分ほどの畳面を作っただけで、周囲は普通の床。まるで畳の島だ。

フラウミキコ20150509 (2)そしてなんだかカーテンがおかしい。窓枠の縦サイズよりずっと長いし、やけにボリュームがある。
視線が天井まで動いた時、謎が解けた。天井に取り付けられたカーテンレールが田の字を画いているのだ。無論丸っこい田の字だ。畳島全体をカーテンで覆ったり、このささやかな和室を、2つに分けることも、カーテンの使用で可能らしい。
どこかでマエストロがニヤリと笑っている気がした。

和室の西側には3人用ロッカーが3台並んで背面を見せている。もちろん、ただの背面ではない。薄型マグネットホワイトボードシートの一番でかいのが貼り付けてある。
俺が見たときホワイトボードシートに書いてあったのは「20XX年8月10日(月) 早番: 遅番: 車番: 庭番: ヘルプ:○」だけだった。

よく見ると●はマグネットで、名前シールが貼ってある。庭番●は<東雲>で、○はミーだった。


写真はクレマチス‘フラウ・ミキコ’、白っぽい花もクレマチスで、‘ルイーズ・ロウ’
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