アリス カイパース「冷蔵庫のうえの人生」
![]() 冷蔵庫に貼ったメモだけで、母と娘の愛と別れが綴られる稀有な本です。
冷蔵庫に貼った買物メモにさえ、「大好きよ、ママ」「愛してるわ、クレア」といった言葉が入るお国柄でなければ、この本は出来なかったでしょう。 母と娘の二人暮らし。母は多忙な産婦人科の医師だから、冷蔵庫のメモには買物だけでなくいろいろなことが綴られます。 母親の体の異常、闘病、手術、再発。娘の交友、特にボーイフレンドとのいざこざ、親子喧嘩、母への励まし・・・・。 特に母親の、言うに言えない気持ち。冷蔵庫に貼るメモにだからこそ書けた、不安な気持ちが、切なく迫ってきます。 メモ1枚に書いた量の文章で1ページが終わるので、全部読むのに30分かからないくらいですが、少ない行数の中に、細やかな愛と愛ゆえに豊かな時間がこもっています。 世に書簡体小説というジャンルがあるけれど、これはメモ体小説の嚆矢かもしれません。 スポンサーサイト
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