八月の六日間/北村薫
![]() フランスに行きたいけれど遠すぎるからと青い背広を買う人もいたっけ。私は山に行きたくなったらこの本を読みます。山にはあこがれるけど、体力と気力が足りない人にぴったりの本だから。 「山の常識」を知らなくてもお話について行けます。ヒロインの山ガールが単独行の人で、かつ体力任せの無茶をしない人なので。すごい健脚でも根性の人でもないところが身近な感じです。 主人公は高校時代から編集者となった現在まで、生きることに丹念で、よい女友達に恵まれています。その女友達たちとの関係性が濃かったり、薄かったり、持続的だったり、単発的だったりと、色々な付き合い方が書かれていて味わい深いのだけれど、幼なじみが病を得、幽明境を異にしてからの思いがとても印象深くて、失ったら寂しいような人にこそ、出会い、付き合いたいものと思いました。 一時は死んでほしいとまで思いつめた、別れた恋人に5年ぶりで会った時の主人公。この時発した一言だけの言葉が、本当に素敵な大人ぶりでした。温かくて、等身大。こんなふうに見栄のない言葉が吐けたら、押しも押されもせぬ大人だな、と思いました。 スポンサーサイト
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