俺に似たひと/平川克美
![]() ほぼ事実を書いているのでしょう、地名も旧友の内田樹さんも実名で出て来ます。なぜ小説にしなければならなかったのかな? 多分、本当に多分だけど、これがノンフィクションだったら本人にとって唯一無二の経験である介護体験記になるところ、小説だから一例からの普遍性を書けたんだろうか。実名ゆえのリアルを感じさせながら、その経験は社会に数多ある経験の中の一つでしかないという冷めた感覚ゆえに、逆にこの一例と他の多数に通底するものがあるのを感じます。 いずれ自分も老いて行くのを、自分に似た人(父親)の老いの進行を見つつ感じている著者。読者である自分にも、親の姿に自分の未来を重ねる視線が移って来る・・・・。 今老い、死にゆこうとする親と、いずれ老い死にゆく自分は同じものだと、「俺に似たひと」というタイトルが語ってします。 俺に似たひとを見つめながら、自分がやがて老いることを受け入れていく経験を、読みながら共有できた気がします。 著者が実父の世話(介護)をしていた時、著者の奥さんはなぜ出て来ないのかという質問が連載中多くあったそうです。妻の実母が介護を必要としていたという事情が小説のはじめの方に出てきていたのに、それでは納得しない人が多かったのかと驚きました。妻の実母と夫の実父が同時期に要介護になったら、血縁であり同性であるものが主たる介護者になるのは当たり前だと思うけどな・・・・・。 スポンサーサイト
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