タイニー・ビレッジ その37
![]() ![]() これを片持ち階段だと言ってしまうと、法規上手すりをつける必要があります」 「片持ち・・・? 」 「片持ち階段。踏み板が壁から突き出して、宙に浮いているように見える階段です。片持ち階段に限りませんが、1メートル以上の高さがある階段には手すりをつけなければならないんです」 「わ、わかったわ。だけど分からない。 どうして12歳のひよりちゃんが、こんなことに詳しいの?」 「そうですよね。普通小学生は知らないですよね。 うちはお父さんがタイニー・ビレッジ紹介リーフレットを作っていて、私はその校正を手伝ったから知っているんです」 「校正を手伝った? それもまた驚きなんだけど」 ![]() 「ああ、そういうわけだったの」 「三校までやって、その都度読まされました。校正も嘘ではないけれど、いずれ私をガイド役にしようという腹積りだったかもしれません」 「きっとそうね。『腹積り』なんて言葉を、すらっと言ってのける小学生は、小学生の標準になんないもん」 「すみません。私、親戚や施設に預けられてる間は本を読むしかなくて、発達がいびつなんです」 「すまなくないわよ。語彙が豊富という強みは生かしましょう。 遠慮なく好きなように話して。私が知らない言葉が出てきたら遠慮なくその場で聞くから」 「ありがとうございます」 |
出来るときが適期
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サンタが家にやってきた
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タイニー・ビレッジ その36
![]() ![]() 「キューブってかわいいわね。ムーミンが住んでいそう」 「スウェーデンのルンド大学で、学生寮に採用されているデザインです。ムーミンも憑いているかもしれません」 「へええ。それで賃貸料は?」 「3坪キューブも9坪ハウスも月5万円です」 「あら、広さが3倍も違って、お値段が一緒?」 「はい。広さだけなら小学校の教室が一番広いですよ。教室も1部屋5万円です」 「テナント料5万円は高いのかしら、安いのかしら?」 「分からないけど、2店舗で1部屋をシェアしているところも、バンドメンバー5人でシェアしているところもありますよ」 ![]() 「練習場に住んでる感じです。個人のスペースは壁にくっつけた2段ベッドだけで、教室の真ん中には防音室を置いています」 「教室を借りて、その中に部屋を置くの? ダブル賃貸?」 「ふふふ、防音室のレンタル料はタマハ楽器に払ってるみたいですよ。教室が広くて天井高があって、部屋代が一人当たり1万円だから出来るって、お兄ちゃんたちが喜んでました」 「そうか、お兄ちゃんたちか」 「はい。あ、こっちのキューブにどうぞ。短期留学中の入居者から、鍵を預かってます。希望者に中を見せてもいいって。このキューブのお姉さん、ミニマリストなんです」 「中を見せてもらえるの? ありがたいわあ」 「はい、どうぞ」 「うお・・・壁から階段が生えてる」 |
タイニー・ビレッジ その35
![]() ![]() 大人が私のことを足手まといだと思っていれば、そのうちの子は私を邪魔にしてはじき出すものなですよ、経験から言えば。 でもここでは、私は受け入れられています。『ひよちゃんは村の子だから、私のお母さんを貸してあげてもいいわ。でも、お母さんの悪口を言えるのは私だけ。お母さんは私のお母さんなんだから、って感じです」 「なんとも、子どもらしい反応ね」 「はい。まるで子どもです」 澄江とひよりは一緒に笑った。今日初めて会った人にこんな話をするくらい、ひよりの出自は公然で、当たり前なのかと思う。 ![]() 「シリーズ全冊持っていますよ」 「なら、お分かりですよね。血縁も養子縁組もないままで、アンは幸せなんです。大丈夫です。お父さんがいるし、春さんは最高の春さんなんです」 本当なら一旦ヨーリーランドの外に出て、タイニー・ビレッジの門から入り直すところだろうが、ひよりの後について山茶花の垣根の中の隙間(枯れた木一本分だから幅60cmくらい)を抜けて、元小学校地「タイニー・ビレッジ」に着いた。 校庭には小さな家がたくさん建っている。 「うふふ。すごいでしょう」 「た、確かに。ここ、本当に人が生活しているの?」 「はい。大きい家でも10坪以下、小さい家は3坪です。 |
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