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安全運転
2015 / 11 / 30 ( Mon ) 17:27:31
ビエネッタ20150527帰館して、実習の終礼は翌日のスケジュール確認だけで、5分で終了した。
「みなさんお疲れ様。今はハイになっていて気がつかないけど、暑い中の実習で体は疲れています。全員安全運転で帰ってね」
自転車で帰宅する3人を見送ると、間をおかずにブックモービルが戻ってきた。
「早かったですね、青木さん。奥さんとあまりお話できなかったんじゃないですか?」
「いえいえ。実が疲れて帰るだろうからあなたも早く帰ってと、妻に追い出されました。
今日は、授業参観にも行けなかった妻に息子の実習を覗かせてもらって、本当にありがとうございました」
深く一礼して、青木はすぐに帰って行った。
「疲れた。疲れたけどいい一日だった」
と明石は一人ごちた。



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通過儀礼
2015 / 11 / 29 ( Sun ) 20:37:23
ジョセフィーヌ20150507「あ、そうだ。<言いまつがい>を受け取った人の挙動が不審でした」
布袋があわてて思い出し報告をした。
「それはもしや外科病棟?」
「そうです。外科の大部屋」
「ならば問題ありません。手術後順調に回復している人への通過儀礼です。
あの本を読むとどうしても笑ってしまって、術後の傷に響いて痛い目に会います。今日<言いまつがい>を受け取った人は、自分用ではなく誰かに読ませるために借りたのでしょう」
「男って、いくつになってもバカなんだ・・・・」
「ご愁傷さま。いいえおめでとう。あなたは今、人生の真理の一つに辿りつきました」
「こんな真理、うれしくないです」

ジョセフィーヌ20150506 (1)女たちの会話に有効な反論もできぬまま、青木茂が耳打ちした。
「あのー、明石さん、そろそろ時間では?」
「あら大変。ナンセンス・ライブラリーに戻りましょう。今日は開店と出前をいっぺんにこなして、その分早く帰らなきゃいけないんだった。中学生の実習は4時終了だもんね。さあ、撤収しましょう」
本日2度目の撤収なので、仕事は早い。
「では、青木さん。私は実習生を連れて戻りますが、ブックモービルはゆっくりいらしてください」
「はい。では、お互い安全運転で」
<実習指導お疲れさまです。お疲れでしょうが、>という労りを込めて青木茂は言った。
「はい。安全運転で」
<お互いに>を省略して、明石は答えた。



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黒岩の壁
2015 / 11 / 28 ( Sat ) 13:40:20
フェアリーブルー20130805「私は明石カードで<生協の白石さん>と<南仏プロヴァンスの12か月>を知りました。
入院期間が短かったから、ここでは読まなかったけど、明石カードの写メを撮って、図書館で探したんです。
自分が生まれる前に書かれた本が、こんなに面白いなんて、びっくりしました」
遠藤発言を嬉しそうに聞いていた明石だったが、「生まれる前に書かれた本」のところでピクリと眉が動いた。
「ああ、それはよかった。探してまで読んでくれたなんてうれしいなあ。しかし南仏プロヴァンスの訳出から隋分たったものね。
病院では読んだ人が明るい気持ちになる本を紹介するようにしてるの。個別に相談を受ければ<ハラハラする本>や<復讐譚>だって紹介するけどね。
ところで、東雲カードも黒岩カードもあったでしょう?」

フェアリーブルー20120518 (2)「はい。東雲さんが<庭の時間>、黒岩さんが<洞窟オジさん>でしたか」
「庭が館長で洞窟が副館長ね。どっちも三行半だったでしょう。あの2人はポップをみくだりはんカードと呼んでるんです。迷惑です」
「でも、どっちも生きる力をめぐる本ですよね」
「そう。微妙にリンクした本を選ぶことはよくあるし、時々同じ本を推してくることもあるんです。ムカツク」
「ムカツク?」
「あ、ごめんなさい。楽屋話だったわ。私たちスタッフはたくさんの本の紹介するために、他の職員が選んでいる本を重ねて選ぶことは出来ない。だけど館長だけはその点が甘くてね、ほとんどフリー。自分が選んだ本を館長も選んでくれた時はものすごくうれしいんだけど、これがなかなか、黒岩の壁が高くて・・・・」



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ライブラリーの明石さん
2015 / 11 / 27 ( Fri ) 11:37:53
フェアリーブルー20130521「『ライブラリーの明石さんコーナー』がいいですよね。生協の白石さんみたいで」
とめずらしく遠藤が興奮気味に割って入った。
「ありがとう遠藤さん。生協の白石さんは私が勝手にライバル視している人だから、白石さんを思い出してもらって、とてもうれしいな。
ところで布袋君。君もいいことを言いました。あなたが回し読みに違和感を持ったのは、それが厳密には回し読みではなく又貸しだからです。
ライブラリーはAさんに貸出した本はAさんに責任を持って返してもらいたい。個人契約での貸出です。勝手にそれを他人に貸与されては、会員費を頂いている他の会員さんにも申し訳がありません。
だけどね、ここは病院でしょう。

フェアリーブルー20130608 (1)体の弱った人が集まっている。移動に助けが必要な人も多いから、絶対に借りた人が返せというのは酷だし、同じ部屋にいる患者同士はまあ、束の間の仮の家族。家族間の回し読み同様に、目をつぶることにしてます」
「退院や転院する人がいるだけでも事故率が高まるでしょう。又貸し容認だと、本の紛失が多くなりませんか」
そう尋ねたのはボランティア・スタッフの青木茂だ。
「そこでデイルームに返却用ブックポストを置かせてもらって、24時間誰でも返却ができるようにしました。隣の部屋の本棚に本を戻すのと同じ感覚で本を返せるように。ブックポストの上に掲示板を置いて、「この本を探しています」とか「この本を見つけた人はこのポストへ」といった一言掲示をしています。催促や注意書きばかりでなく、みんなが読みたくなる耳より情報も混ぜながら」



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無垢の木と漆喰・和紙でつくる自然素材の家/丸山景右
2015 / 11 / 26 ( Thu ) 21:37:32
「雨楽の家」の宣伝本。
屋根裏部屋の魅力を語ろうとして、カナダで34歳のモンゴメリが、屋根裏部屋で「赤毛のアン」を書いたなんてエピソードを紹介しています。
それ、ウソですから。34歳はアンが本として出版された年で、書いたのはもっと前。しまいこんで忘れていた原稿を発掘したのは屋根裏だけど、モンゴメリが執筆したのは自分の部屋だから。
悪意でついたウソではないのだろうけど、細部のツメが甘い人に、自分の家はまかせたくないと思います。


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実がこの実習に割り振られた理由
2015 / 11 / 26 ( Thu ) 00:49:20
マルチブルー20120507今度は本館でお待ちしていますね」
と明石は言い、
「はい」
とだけ実は言った。
「よろしくお願いします」
と青木芳枝は静かに頭を下げ、院内に戻って行った。その後姿を見送りながら
「青木さん、いつもだったら、今読んでいる本の感想を、簡単にお話してくださるんだけどな。聞けなくて残念だな」
と明石がつぶやいた。
明石の視線を追って行くと、病院のガラスの大窓の向こうで、芳枝がこちらを見ているのがわかった。
もの言わず、明石が実を見る。視線に促されて、実が母の姿に向けて手を上げると、芳枝も窓の向こうで手を振った。

プリバルチカ20120513程なく院内出前貸出組が戻ってきた。
「問題なかったですか?」
という明石の問いは遠藤に向けられていた。
「異常ありません」
そういう、遠藤の顔が上気している。入院していた時の知り合いにからかわれたか。
「異常ないけど、変です」
と言ったのは布袋。
「あれ絶対回し読みしてますよ。『シルバー川柳5 』を持って行った時、「私が次ね」「俺、その次で」って会話が飛び交ってました。図書館の本を少年ジャンプみたいに回し読みしていいんでしょうか」
「<確かめるむかし愛情いま寝息>か。ここのベストセラーだわね・・・。」
明石は微苦笑で答えた。



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退院
2015 / 11 / 25 ( Wed ) 21:56:41
コンテスドブショウ20120708「ありがとう。あなたのおススメには外れが無いわ。楽しみ」
「その本、これが初貸出なので、まだだれも読んでないんです。あとで感想を教えてください」
「返却期限は9月13日になります。どうぞ」
「感想はまかせて。じゃ、月曜日にね」
「ゆっくり読んでください。楽しみにしています」
竹沢さんは本を抱えていそいそと去って行った。
入れ替わりに青木芳枝がやってきた。余りにもちょうどよく入れ替わったので、もしかしたら他の人がいなくなるのを近くで待っていたのかもしれない。
「こんにちは、明石さん。うちの男たちがお世話になりますね」
「いいえ、こちらこそお世話になっています。今年の実習生は大変優秀ですよ」
「ありがとうございます。

コンテスドブショウ20130820それでは実習生さんにお願いします。予約本の受け取りに来ました」
そう言って実の母は会員証カードを出した。
「こんにちは。少々お待ちください」
接客でもともと緊張していたので、これ以上緊張できない実は、マニュアル通りの動きしかできなかった。知らない人が見れば一見何の動揺もなく見えたかもしれない。本から目を離さずに
「お待たせしました。返却期限は9月13日になります。どうぞ」
と、母に本を手渡した。
「ありがとう。明後日の退院が決まったから、この本を返却するときは本館に伺いますね」
と芳枝は言った。
「退院ですか。それはおめでとうございます。



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大人が作る秘密基地/影山裕樹
2015 / 11 / 25 ( Wed ) 21:22:55
建築物は所有者のものだから、異臭騒音景観を壊すといった人に迷惑をかけることがないのならば、他人の趣味に文句は言わない方がいいと思うんです。
それでも、ツリーハウスって嫌だなと思う。
誰が迷惑するって、それはもちろん木が。
どのツリーハウスを見ても、木がかわいそうだと思います。


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上出来
2015 / 11 / 24 ( Tue ) 18:05:04
フルディーン20120628「そう。でも入院期間だけ会員になりたい人も多いから、入院患者には1カ月1千円のゲスト会員券も発行します」
「そうだったんですか・・・。千円なら、単行本1冊借りたら元が取れますね。文庫本なら2冊かな」
「そ。だから院内の売店には目の敵にされてるかも」
「おやおや、そんなことはないよ。私たちがここに来る時か帰るとき、いつもお茶やお菓子を買っているもの」
「あら、桜沢さん。こんにちは。ありがたいけど、食べ過ぎ飲みすぎには気をつけてくださいね。それに、今日は実習生が貸出手続きしますので、よろしくお願いします」
「知ってるよ。城北中学校の生徒さんだね。このジャージの子がうちの方まで走ってくるんだよ。陸上部だって言ってた」
「そうですか。青木君は野球部なんですよ」
「そうかい。青木君かい。青木君、いずれは甲子園かい」

フルディーン20120904「はい。お待たせしました。今日の貸出は2冊で、返却期限は9月13日です」
「もう、出来たの。実習生でも早いもんだね。ありがとう」
「ありがとうございました」
いきなり会話に入り込んできたおばあさんは、手を振って去って行った。おばあさんが充分離れてから、明石は言った。
「上出来。患者さんは私たちと話すのを楽しみにしてくれる人も多いけど、短く切り上げるのも大事よ。ひいきは禁物なの」
「はあ」
明石に褒められたが、いっぱいいっぱいで作業して、マニュアル通りしゃべっていただけだから、実の返事はハリが無かった。
次のお客は武川さんだった。
「こんにちは。今日は何がお奨め?」
「『使ってみたい武士の日本語』の次の本だったら『これを大和言葉で言えますか?』ですかねえ。」

 
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火花/又吉直樹
2015 / 11 / 24 ( Tue ) 00:13:50
著者 : 又吉直樹
文藝春秋
発売日 : 2015-03-11
以外にするする普通に読めました。
芥川賞受賞作は読みづらいと思っていたけど、これは市井にありそうなこと。
そういう男もいたかもね、いたら哀しい男だったね、せめてその男に関わった女が、幸せになっていますようにと、祈って本を閉じました。


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出前貸出
2015 / 11 / 23 ( Mon ) 23:43:16
フルディーン20120906普段は車番スタッフは1人なんだもの、病院のユーザーは貸出を待つのに慣れてるから、あわてなくていいわ。待っている間に他の待ち人と本の話ができるしね」
と明石が言った。
ヨーリー病院までは車で10分ほどなので、すぐ着いてしまった。
とりあえず父親と別の班になってほっとした実だったが、仕事を始めてから不安になってきた。
毎日やってくるムックモービルを知っていて、目指してくるのは、近所の人と、通院患者と、入院患者のうち歩き回れるくらい軽傷または回復期の人。・・・・ということは、明後日退院予定の母が来たりしないか?
「あの、どういう人に、病室まで配達しているんですか? あんまり重症の人は本だって読めませんよね?」
と、実は質問してみた。

フルディーン20120904 (3)「ああ、それはね、最初の30分ここで待って、受けとりに来なかった人のところに持って行くだけ。自分で本を見て選びたい人と、自分で歩けることを喜んでいる人は受け取りに来てくれるよ。リクエストカード書ける人、またはインターネットで予約をいれる元気のある人は、届けに行けば喜んで読んでくれる」
「そうですか。リクエストをくれた人以外にも、ブックトラックで本を持って行ったら、読みたくなる人がいるんじゃないでしょうか?」
「そうね、公共図書館がそこまでできれば理想かもしれない。ナンセンス・ライブラリーは会員制有料図書館だから、頼まれた物は持っていくけど、こちらからセールスするのは控えているのよ」
「あ、そうか。貸出会員は3カ月3千円、1年なら1万円でしたっけ」


 
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図書館の水脈/竹内真
2015 / 11 / 23 ( Mon ) 23:12:28
海辺のカフカを読んで共鳴する男女が徳島に旅行する。そこで、あまり売れていないがかろうじて作家が生業にはなっている男と出会い、一緒に行動することになる。
村上春樹ファンには一読を勧めたいところ。
私は春樹ファンではなく、図書館に住んでいた男の話を読みたかっただけ。しかし、作中の作家は一晩図書館の和室に「泊った」だけで「住んで」はおらず、惜しかった。


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下町ロケット2 ガウディ計画/池井戸潤
2015 / 11 / 22 ( Sun ) 22:18:38
エンターテイメントとして充分面白い。
でも、技術者の倫理がこんなものだとしたら、がっかりだ。実験結果の粉飾をした人物の心の闇を、もっと書きこんで欲しかった。

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病院での業務内容
2015 / 11 / 22 ( Sun ) 06:34:26
ビルドリヨン20120610「病院に着いたら、青木くんは私とブックモービルで店番、布袋君と遠藤さんは青木君のお父さんと病室を回ってね」
「青木君のお父さんって一体ナンセンスライブラリーの何なんですか?」
好奇心に駆られて布袋が尋ねた。
「ほぼ毎日奥さんのお見舞いに来ていて、ナンセンスライブラリーの入院患者への貸出サービスをすっかり知り尽くしたボランティアスタッフよ。
もっともナンセンスライブラリー本館が駅近くにあることを知ったのは一週間前だし、ボランティアスタッフとして院内を回るのは今日が初めてなんだけどね。大丈夫よ、このブックトラックに乗せた本はみんな患者さんのリクエスト本で、積み込み前に貸出手続きをしてきているから、ご本人にわたすだけ。返却本はブックモービルに持ち帰ってから返却処理をするんだから。

ビルドリヨン20120828 (2)青木さんについていってもらうのは、患者さんの邪魔をしないように配慮するのに、大人がいた方がいいからよ」
「そうか、僕らはただの運び屋なんですね」
「ううん。それは違う。患者さんはリクエストカードを書けない人もいるから、代筆が必要だし、書名や著者名を覚えていない人もいるから、相手が読みたい本が何なのか突きとめる謎解きもしなきゃならない」
「え。なぞ解きは僕、無理です」
「謎解きが必要な時と、未入会の人が初めて本を借りたいと言った時は私を呼びに来て。一人戻ってきても大丈夫なように、院内巡回に2人割いているんだからね」
「え。明石さんが行っちゃったら、僕が車に一人で残るんですか?」
「そうだけど、その時は来た人には『係はすぐ戻ります』って言っとけばいいから。


 
写真はクレマチス`ビルドリヨン’、白い花はクレマチス`フルディーン’
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日常の回復
2015 / 11 / 21 ( Sat ) 22:14:27
テンテル20150524 (8)「遠藤さんは赤くなるし、青木君は青くなるし、布袋君は黒いまんまね。どうしたことです?」
「あの、私は、自分が入院していた時の担当の先生や看護師さんに会うかもと思ったら緊張してしまって」
「元気になって立派にやってるところを見てもらいなさいね」
「ハイ」
「青木君はどうしたの?」
「いや、実習先で母に会うのも不思議な感じなのに、父まで出て来ちゃ、混乱するなと言っても無理です」
「あら、聞いてなかったの。青木君のお母さんは入院患者の中でも5本の指に入る読書家で、うちのお得意様よ。
お母さんは退院してヨーリー・ナンセンス・ライブラリー本館を訪ねるのを楽しみにしていたのに、だんなさんが先にナンセンス・ライブラリーに来ちゃったじゃない?

テンテル20130525 (2)せめて書庫には入らないでって、慌てて止めたようよ。余程楽しみに蔵書の様子を想像してらしたんでしょうね」
「へええ・・・・・」
遠藤は感心したようにため息をついたが、男子二人の方は「何のことやら」という息の漏れ方だった。
「まーったく、男の子は自分のことを親に話すのを面倒がるようになると、親の話を聞くのも面倒になるみたいね」
と明石は言った。いや、そんなことはない。ほんのひと月ほど前まで、実は父や母の沈黙まで聞きとろうとし、ささいなしぐさや溜息から、どこかに嘘が無いかと探っていた。それが、母の病状の好転に伴って急速に緊張が薄れ、親の話への注意が散漫になってきていた。実は明石に反論するのも忘れ、自分に「日常」が戻ってきつつあったのをあらためて感じた。母が治ると決まってから、こんなに、油断できるようになったんだな。と。


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にょにょにょっ記/穂村弘
2015 / 11 / 21 ( Sat ) 22:03:54
中2病の半歩手前で踏みとどまる著者。
短い文章でも「言えてる」のは本業が歌人だから当たり前か。それとも定型に頼れないのに、短い文章でよく伝えられるなあと感心するべきか。

イラストレーターのフジモト・マサルさんがまことに上手く、世界音痴な歌人の意図を酌んだうえで。素晴らしいフジモトワールドを繰り広げています。特に177ページのイラストは傑作だと思います。

世界音痴だと思っていた著者が、私が中野のお父さんを読んで初めて知ったオイスターバーに、既に行っていたというショック。
吉野家の凋落を知った著者の気持ちが、ちょっとわかるかも・・・・。

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ブックモービル転進
2015 / 11 / 20 ( Fri ) 23:30:36
エンテル20120617「うん、選書担当者の時もあるし、顧問の時もあるよ。もっとも、顧問はリストアップだけで、作成作業は職員と実習生だけどね」
「え? それってもしかして・・・」
「そう。明日は君たちがしおりづくりをするんです。楽しみでしょ?」
「はい」「ハッ」「ハイ」
「よろしい。どうも運動部の二人は反射で返事をしているような気もするけど、前向きなのは確かね。じゃ、明日のことは明日の楽しみにして、ブックモービルを移動します。ヨーリー病院へ」
「ヨーリー病院?」
と行き先に反応したのは青木実。
「ブックモービルの乗車定員は?」「僕は走って行きます。僕なら1時間以内で行けます」

エンテル20120625移動方法を気にしたのは、遠藤緑と布袋葵。
「小学校や公民館へは町立図書館のBMが回りますから、我がナンセンス・ライブラリーが行くのは、町内で唯一入院設備のある総合病院です。
で、今日の移動は実習生3人は私の運転する乗用車で移動、ブックモービルはボランティアの青木茂さんが、ここからヨーリー病院まで運転してくれます」
明石はそれだけ説明して、すぐにタ―プを外して畳んだり、駅周りに点々と配置した「ブックモービル開店中」の幟を回収したりの指示を飛ばした。実は頭の中に疑問符満載のまま、走り回った。
3時10分前に乗用車が駅ロータリーに滑り込み、運転してきた実の父は撤収なったブックモービルに乗り換えた。入れ替わりに。明石と実習生3人が乗用車に乗って出発だ。



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中野のお父さん/北村薫
2015 / 11 / 20 ( Fri ) 21:48:25
太宰治の辞書」に続いて女性編集者が主人公のお話。
今度のヒロイン美希はまだ若く、編集者にしてはあまり本も読んでいない感じ。
国語教師で読書家の父親に頼ってばかりいる。実家が中野にあるから中野のお父さん。美希が疑問を父親に投げる、電子レンジに食材を入れた時の如く、きれいに答えが出て来る。
しかしこの中野のお父さんレンジは、加熱だけでなく、食材を切ったり調味料を入れたりもしてしまう。
つまり、美希が気がつかない謎(不自然な点)を謎として認識し、推理し、謎を解いてしまうのだ。
読んで面白かったんだけど、もう少し主人公に苦労させないと、読者が楽をしすぎると思うな。


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食う寝る遊ぶ 小屋暮らし/中村好文
2015 / 11 / 19 ( Thu ) 15:42:17
小屋暮らしがどんなものか読みたかったのだけれど、好文さんの場合は、だんだん大草原の小さな家に近づいて行く気がします。生きる為のではなく、楽しむための、自給自足ですが。
小屋にさらに離れ(湯小屋)を建てて、風呂と書斎と寝室に使っているのが、また、おもしろい住まい方でした。
自分も(将来宝くじが当たったら)こんな普請道楽をしたいものです。

「好文」っていい名前だなあ。つい「こうぶん」と読んでしまいますが。

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もう読んだ?栞
2015 / 11 / 19 ( Thu ) 00:24:24
ベティコーニング20130530「そりゃあ、いるわよ。著者の信望者や、著者の関係者や、たまには著者本人から、苦情が来ることがある。でもね、議論は恐れちゃいけないの。みんなが考える為に、私たちはナンセンス・ライブラリーを名乗っているんだから。『鵜呑みにせず、真価をよく味わっていただくためのシールです』と答えると大概のクレームは収まるけど、クレームの主を読書会にご招待して話し合うこともあります」
「え? 読書会?」
「そう。月に一度の読書会。テーマに選ばれた本の購入推薦者と顧問団の中でその本が含まれるジャンルを担当する人は必ず出ることになってます。一般の参加者はテーマの本だけ読んでくればいいけど、購入推薦者は顧問が選んだ参考文献も読んで行かなきゃならないから、結構大変」
「参考文献ってこういうのですか?」

ベティコーニング20130721 (1)「よく気がついたわね。そう、それ」
布袋が持っているのは「できる男は超少食―空腹こそ活力の源 !」という本と、そこに挟まれていた栞で

「これもう読んだ?」 
寝たきり老人になりたくないならダイエットはおやめなさい――一生健康でいられる3つの習慣

と書かかれている。
「そう、それが裏の課題図書。この栞はたまたま1冊しか書いてないけど、一番大判の栞は葉書大だからね。5冊くらい書いてあって、全部読むのはなかなか大変」
「<これもう読んだ?栞>を作っているのは明石さんたちじゃないんですか?」


 
写真はクレマチス`ベティ・コ-ニング’
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顧問団
2015 / 11 / 18 ( Wed ) 19:48:23
ラプソディ20120906「UFOや心霊の本も同じです。占いじゃなくても、血液型別『自分の説明書』にはこのシールが貼られました」
「エロ本も占いも、条件付きOKなんですね。じゃあダメな本ってどんなんだろ・・・」
「それはね、差別を助長する本。そして犯罪被害者や家族をさらに傷つける本」
「・・・・・ヘイト・スピーチ・・・・」
「・・・・『絶歌』」
「ああ、言いたいことは分かってくれてるみたいね。
選書担当は必ず何らかの専門雑誌を継続的に読んでる。因みに私が黒岩さんが「史学雑誌」、館長は「出版ニュース」、私が読んでいるのは「月刊消費者」。根拠のない中傷なのか、根拠のある批判なのかの差は、選書者が無知であってはわからないから、少しでも勉強しないとね」

ラプソディ20110808「それにヨーリー・ナンセンス顧問団がいる。退職した研究者とか休業中の教員とか、求職中のオーバードクターとかね。
自分が選書した本に、顧問団から『信じる者は救われないかも』シールを貼られるとショックだよ・・・」
「え、今迄にどんなのに貼られたんですか?」
「ええー、それを訊くの? 若気の至りのそれを~・・・」
「はい。聞きたいです」
「ああもう、3人で声をそろえて。ま、君たちは知らない本だよ。『水からの伝言』だけどね。信じる者シールが貼ってある本は、恐いもの見たさなのか何なのか、結構人気が出るから、選書者が「トンデモ」度合いを知ってて購入したならいいんだけどね・・・・。
でも、シールを張るのはいかにも「トンデモ」の本だけ。新説なのか珍説なのかは読者が決める」
「あのー、そのシールを貼られることで怒る人はいないんでしょうか?」


 
上の写真はクレマチス`ラプソディ’
下の写真はクレマチス‘エトワール・バイオレット’と`ラプソディ’
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働く家。/OMソーラー協会
2015 / 11 / 18 ( Wed ) 13:10:12
空調だけでなく、給湯も家(と太陽)がしてくれる。それが働く家。
家庭用浄化槽「個人下水道システムZ号」とソーラーで土中に熱を送る温室「ソーラー畑」はとても興味深い。
オフグリッドの機能がまだまだだが、それは出版年(2004)からして仕方がない。そろそろ続編が出ないかなあ・・・。


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タブー
2015 / 11 / 17 ( Tue ) 17:16:21
ラプソディ20140908「へええ。ベテラン恐るべしですね」
「そうね、でもあたしなんかベテランの内じゃないわよ。
館長は2階でブラブラしながら、お客さんの評判がいい本を探し出すのが得意だし、なんかヨーリーブックスの本を全部見計らい本にしているんじゃないかと思うわ。
黒岩さんなんか出版後3カ月以上たった本しか選書対象にしないっていう、ベテランの意地の塊。
黒岩さんはどうも、町立図書館が買い洩らした本を狙っているみたい。黒岩さんの推薦した本って、買ってから3年以上経ってから館長賞を取ることがあって、唸らされるのよね・・・。」
「へええ」
唸らされる話に対して中学生3人が唸っているのが面白い。
「ああ、それとね、蔵書とかぶるの本の他にも、買ったらまずい本っていうのがあるから注意ね」

ラプソディ20140528 (1)明石は質問に転じた。
「ところで、あなたたちは何が買ったらダメな本だと思う」
「エロ本?」
「占いとか、非科学的な本?」
「おや、男子二人の意見は一致してるわね」
布袋と青木は小声で『お前俺と同じこと言うなよ』『お前こそ』と言いながら肘でつつき合っている。
「まず、エロ本ですが、エロ本を購入本に推薦すると、館長に『この本をあなたの恋人に見せてもいいですか』と訊かれます。そのとき迷いなく『はい』と言えれば購入OKです。ヤオイ本もBLも同じ基準です。
次に占いですが、その本の表紙に『信じる者は救われないかもしれない』というシールを貼って閲覧に出します。UFOや心霊の本も同じです」


 
写真はクレマチス`ラプソディ’
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「奇跡」と呼ばれた日本の名作住宅50
2015 / 11 / 17 ( Tue ) 12:01:08
自分が名作と信じている作品が入っていないとムカつきますが、現代住宅建築史が俯瞰できて、私には楽しい1冊でした。


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選書
2015 / 11 / 16 ( Mon ) 13:54:00
エトワールバイオレット20110604「選書はね、第一の条件が蔵書とかぶらないこと。蔵書というのは既にナンセンス・ライブラリーに入っている本のことね。次に町立図書館の蔵書ともかぶらないこと」
「それはかなり難しい条件ですね・・・?」
「いいえ簡単よ。これから出る本を選書すればいいんだから」
「これから出る本? どうやって??」
中学生が激しく乗り出す。明石はブックマークしている近刊情報のサイトを次々に中学生に見せて行った。
「日本書籍出版協会も出版社も新刊を売るのに必死だから、情報は嫌というほどある。どこでいい情報をつかむかは企業秘密だから、ここで見た情報源を他のスタッフに言っちゃだめだからね」
片目をつぶる明石。中学生は「言っちゃだめ」が冗談なのか本気なのか半信半疑だ。

エトワールバイオレット20120608「スタッフ同士でも内緒ですか?」
「そうよ、青木君。スタッフはライバルなの。同じ本を館長に推薦すると、早く推薦した人が推薦者として登録されるからね」
「登録されるとどうなるんですか」
「その本の予約人数が50人を超えた時、またはその本の貸出回数が50回を超えた時に館長賞をもらえるの。これが楽しみっていうか励みなんだよね~」
「そしたら、本屋大賞とか直木賞の発表の時は秒速の戦いじゃないですか?」
「受賞作品は慣例的に新人職員に譲っているから戦いはないよ。でも大体において、新人のチャンスは受賞時点で単行本化されていなかった作品だけって感じかな。
賞の候補になった時点、またはその前に本が入っていることが多いから」


 
写真はクレマチス`エトワール・バイオレット’
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シルバー川柳5  確かめるむかし愛情いま寝息
2015 / 11 / 16 ( Mon ) 12:04:41
安定の面白さ。
1巻から通読すると類句(発想が同じで表現が似ている句)も多いが、老いが普遍性のあるテーマだからそれも当然。プロなら類句は発表しないけど、これは川柳作家としては投稿作品集だから問題ないでしょう。
要は読者が何巻もいっぺんに読まなければいいだけ。
面白い本です。ただ、読むのは1日1冊までにしましょう。


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車番の仕事
2015 / 11 / 15 ( Sun ) 22:39:03
ブルーエンジェル20120613 (2)「それでね、車と幟に宣伝してもらっている間、職員は選書をしています。もちろん、貸出や返却のお客さんがあるときは、そっちが優先」。
「選書? 本を選ぶんですか?」
「そう。ナンセンス・ライブラリーに入れる本を選ぶ。今はコンピュータがあれば、どこででも選書ができる時代です」
「うわあ。仕事熱心ですね。これだけ暑いとダレませんか?」
「うん。まあ。人間だもの。目をあいて寝ているときもあるよ。雨の日と猛暑日は駅構内改札前で開店してもいいことになっているから、どうにか熱中症死は免れてる。気温10度以下の時も駅中操業よ」
「どうしていつも駅中にしないんですか?」
「ヨーリー駅北口は、町役場に行く人も町立体育館に行く人もよく通るところ。

ブルーエンジェル20121006私立高校や私大のスクールバスも近くに停まる好立地。だから、気候がいい時はここで宣伝しない手はないの」
「宣伝効果は?」
「また、青木君はキツイ質問を」
そういいながら、明石は笑った。
「私たちがこの車で宣伝しているのはナンセンス・ライブラリーの存在だけじゃない。ヨーリー町は本を読むチャンスがある町だってこと。手の届くところに本があるってこと。それを知らせるために、私たちはここに店開きしてる」
他市からやってきた遠藤だけが頷き、他の二人は「町」単位の話になったところですっかり手が止まっていた。
「あの、選書ってどうやるんですか?」
遠藤が静かに訊いた。
「そうそう。その話をしようとしていたんだわ。


 
上の写真はクレマチス 青い`ジェニー’と紫の‘ビオラ’と白っぽい‘ブルー・エンジェル’、
下の写真はクレマチス`ブルー・エンジェル’
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それでも建てたい!!10坪の土地に広い家/杉浦伝宗
2015 / 11 / 15 ( Sun ) 12:10:47
こういうのは好みの問題だとつくづく思う。
許される容積を使い切ろうという意思が、道路から見てもビシバシ伝わって来る建築です。

好みの問題で、私はこの傾向(ここまで私の領分だという主張をする家)があまり好きになれません。

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ヒマな車番
2015 / 11 / 14 ( Sat ) 23:39:25
ベノサバイオレシア20110828「なんか楽しそうですね。僕たち、もうあがったりですよ」
橋上駅への昇り口で、防災の日イベントチラシを配っていた布袋と青木が戻ってきた。
「あらあらお疲れ様。見ていたわよ、あなたたちタクシプールで待っているタクシーの運転手さんにもチラシを配ったでしょう。
「だってこの駅、人と電車の本数が少な」すぎで閑なんですよ。タクシーの運転手さんも待つ身のつらさを知ってるから優しかったっす」
「サッカーって、ピッチにいる全員の動きを見る競技だもんね。いいところに目をつけました」。
「あのー、それで、普段はしないビラ配りをしてもこんなに暇なんて、普段は一体ここで何をしているんですか?」
「うーむ。キャッチャーは痛いところを突くわね」
「すいません。純粋に疑問だったんで」

ベノサバイオレシア20110829どうも中学生たちはみんなそれが純粋に疑問だったらしい。青木以外の二人も目を輝かせて明石の答えを待っている。
「しょうがない。じゃ、作業しながら話しましょう。チラシを半分に折って、ここにある全冊に挟み込むわよ」
作業がうまく流れ始めたところで明石は話し出した。
「お察しの通り、車番は結構ヒマです。だって本店が駅から3分かからないところにあるんだもん。歩いても来られる駅で陣を張る意味はあんまりないの。でもね、ヨーリー・ナンセンス・ライブラリーのペイントをした車がここにあることに価値がある。本に大した興味がない人の目にも、ナンセンス・ライブラリーが飛び込むようにここにいる。
車をここに置いている時間は幟(のぼり)だって立ててるしね。ちなみに幟は駅に入ってくる電車や出て行く電車が低速で走っているところから見えるように配置しています。


 
写真はクレマチス`ベノサ・バイオレシア’
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できる男は超少食/船瀬俊介
2015 / 11 / 14 ( Sat ) 11:59:08
小食にして絶好調だという証左に、自分の例として、1日80枚原稿が書けた話がありました。
書いた原稿のクオリティを全く問わない(言及しない)ところが、さすがトンデモ本の人でした。

この本の記述内容には繰り返しが多いです。

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