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大器
2015/10/31(Sat)
ニオベ20120526 (3)意外ななりゆきに僕たちが驚いていると、ショップの兄さんは館長を振り向いた。
「館長。館長もいかがですか、かき氷。館長からなら遠慮なくお代をいただきますよ。倍額でもいいです」
「だめ。この子たちは今日だけだけど、私は今食べたら確実に毎日食べたくなるからだめ」
「わかりました。じゃあみんな、ゆっくり食べて、この後もがんばってな」
「はい。ごちそうさまです」「さまです」「す」
また、3人の声がかぶった。城中サッカー部OBは笑って持ち場に戻って行った。
館長はさじを舐めている僕たちに話し出した。
「ね、すごく近所の人だったでしょう。まるで庭先くらい近所。
今、一回り庭を見てきたけど、とても綺麗な仕事ぶりでした。

晴山20120603グッジョブです。でも草むしりはここで一旦止めて、そうね4時半から続きをして、仕上げて帰りましょう」
「館長、生意気ですが提案があります。サッカー部員と野球部員はあと15分作業しても絶対に倒れません。遠藤に日蔭の草を集めておいてもらって、俺たち二人で残りの草むしりをさせてください。そうしたらこのドロドロを着替えるのが1回で済みます」
館長は布袋君の栗色に焼けた肌と、青木君の焼きおにぎりのような顔を見比べ、急に保護欲を失ったようだった。
「生意気だけど一理ありますね。許可します。ただしかき氷だけでなく十分水分をとってから、続きをやってください。遠藤さんは1人じゃなく、私と一緒に作業ね」
実習初日に施設長に意見を言うとはすごいやつ、と誰もが思った。布袋だけが、この状況で中学生の意見を採用できる館長って、すげえなと思っていた。



写真はクレマチス‘ニオベ’(深紅)、晴山(白)
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かき氷
2015/10/30(Fri)
ワルシャフスカニキ20150523サッカー部のエースと野球部の補欠に交互に名を呼ばれ、まるで二人が自分を助けに来る権利を争っているかのような錯覚に、ドギマギする緑だったが、こんな風に堂々と親切にされると恥ずかしいけどうれしい。
しかし、自分と布袋君は実習が今の時期になった理由がはっきりしているが、青木君はどうしたわけで今頃実習をしているんだろう。先輩の中には、実習期間前に身内が危篤になって、後から実習に行くことになった人がいたみたいだから、安易に聞いて見るわけにもいかない。
小一時間過ぎたころに館長がやってきた。
「みなさーーんクレマチスは残して・・・・・くれてますね。じゃ、50分作業したら10分休みましょうかー」
「先生・・・館長、大丈夫です。あと少しやらせてください。もう少しで終わりそう・・・」

ニオベ20120531「それがダメなのよ。すぐ休んで。実はご近所からかき氷の差し入れがありました。みんなすぐ来て」
それまで聞こえないふりをして、手を休めずに作業していた男子二人がすっ飛んできた。
「あなたたちの掛け声を、近所の『サッカー部OB』が懐かしがっちゃって、今、北側のベンチに届けてくださるって連絡が来たから、全員手を洗ってベンチに集合!」

3人がベンチに座ると、かき氷を持ってやってきたのは、ヨーリー移動コーヒーショップの兄さんと館長だった。
「お疲れ。むしった草はいくつかの山にして太陽に干しておいて。午後の作業が終わった時まとめてごみ袋に入れてくれたら、僕が持ち帰って処分するから」
「あ、ありがとうございます・・・・」



上の写真はクレマチス‘ワルシャフスカ・ニキ’(紫紅)と‘エミリア・プラター’(藤色)
下の写真はクレマチス‘ニオベ’(深紅)
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サッカー部と野球部
2015/10/29(Thu)
フォンドメモリーズ20110615 (4)建物を隔てていて互いの姿は見えない。しばらくすると布袋の声が響いた。
「じょうーほーく・オ・レ 2メートルクリア」
そう来るかサッカー部。
サッカー部と野球部はいつだって微妙なライバル関係にある。
「オーラーイ。3メートルクリア」
と僕も叫んだ。
遠藤が何か言うか少し待ったが、ひ弱な遠藤は声も出ないらしい。そうだよな、文化部のやつってでかい声を出す習慣ないもんな。仲間はずれじゃかわいそうだな。
「オーラーイ。遠藤まであと5メール50」
「じょうーほーく・オ・レ 遠藤まで5メートル」
と布袋が応じてきた。通じたようだ。面白くなって、互いの姿が見えてきても、1m進むごとに声をかけて、(少なくとも男同士は)競争で草をむしった。

ワルシャワニキ20110620館内では、早番の黒岩さんと館長が話していた。
「おやおや、今年の実習生は元気がいいですな」
「見に行かなくても進行状況が分かって便利よ。
ご近所に明日から中学生の実習生が来るからよろしくって挨拶しておいてよかったわ」
「さすが館長。抜かりない」
「は、ぬかってたかも。あの子たちにクレマチスを抜かないように注意するのを忘れたわ」
館長はあわてて庭へと向かったが、そこには青木家の息子がいたので問題なかった。
「クレマチスは抜かないで。大体等間隔で並んでいるから、わかると思うけど、草かどうか迷うことがあったら館長に聞いてから抜くこと」
と親父の注意を自分で考えたかのように他の二人に伝えていた。サッカー部だけに仕切らせてはおかないという意地からの発言だったが、妥当な注意であった。



写真はクレマチス‘フォンド・メモリーズ’(覆輪)、‘ワルシャフスカ・ニキ’(紫紅)
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職業体験実習始まる
2015/10/28(Wed)
フォンドメモリーズ20110615 (2)職業体験実習初日、中学生三名はそろいのジャージ姿で神妙に並んでいた。
「布袋葵くん、遠藤緑さん、青木実くん、ヨーリー・ナンセンス・ライブラリーにようこそ。館長の東雲です」
館長は僕の名前のところで、僕を知っているというアクションを少しも見せなかった。ありがたい。
「おおざっぱにスケジュールを言うと、職員の勤務は庭番と早番が10:00-18:00、遅番と車番が13:00-21:00、開館時間は13:00-21:00、君たちの実習は10:00-17:00。午前中は庭番か早番と仕事をし、午後は遅番か車番と仕事をしてもらいます。
なお、今日は庭番の私がの職員に了解をとりましたから、最初は3人とも草むしりです。昨日の雨で土が柔らかくなっていて、今が絶好の草むしりチャンスです。太陽と競争で、建物の日陰になっている面から作業しましょう。

フォンドメモリーズ20110615 (3)残りが日向だけになったらそこで撤収。昨年のチームは1日で仕上げましたよ」
最後の一言が、僕らに火をつけた。布袋が手を上げた。
「1日というのは9時から5時までずーっとですか?」
「いいえ、朝と夕方に分けて作業しました。あと30分で終わるってところで、残りの部分が日向になってしまったのでね。
去年と同様、今年も、どこから始めてどの向きに進むか、私は指示を出さないから、チームで考えて作業してください」
「分かりました。布陣を考えます」
布袋君はサッカー部の10番を背負う男。みんなが体験実習に行く時期に、選抜チームに選ばれて試合に行ってたから、今回の時期外れ実習となった。布袋君の仕切りで、3人が3か所に散った。遠藤緑は風邪をこじらせて肺炎になり、みんなと一緒の時期に体験実習に行けなった虚弱児だから、僕と布袋の早く終わった方が遠藤の助っ人に行く作戦だ。



写真はクレマチス‘フォンド・メモリーズ’(覆輪)、‘ワルシャフスカ・ニキ’(紫紅)
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出店条件
2015/10/27(Tue)
ジェニー20130608 (2)幸せそうにカフェオレを作る背中に、僕は声をかけた。
「あのー、どうしてコーヒーに和菓子なんですか?」
「以外に合うんだよ。美味しいコーヒーにはクッキーもせんべいも合う」
「どっちもいいならどうして和菓子?」
「洋菓子よりローカロリーだろ?」
「そう?なんですか・・・」
「うん。ローカロリー。だけど一番の理由は、近所に伊瀬屋さんが昔からあったこと。伊瀬屋さんが休みの日は、やっぱり近所の<ベーカリーほかほか>さんからベーグルと焼き菓子を仕入れてるよ」
「近所だから・・・?」
「分からないよね、中学生じゃ。僕も始めはよくわからなかった。でもその条件で、場所を無料で貸してもらってる」

ブルーエンジェル20120613ここで商売するのに館長が出した条件が、自分で調理するもの以外は近所で仕入れること、庭で出るごみはライブラリーの出す分も引き受けるってことだったんだ。
ここは駅近で、中央公民館に来た人も町立図書館に来た人も寄ってくれる。ナンセンス・ライブラリーが花盛りの時なんか、たくさんの人が庭を見に来てコーヒーを飲んで行く。かけだしの僕には願ってもない場所だよ。
ハイ」
僕は淹れてもらったアイスカフェオレを神妙に飲んだ。
僕は何でも親がかりだけど、この兄ちゃんは、さっきの産直おじいさんや、ライブラリーの館長や、仕入先の人に血縁じゃない人に支えられて生きてるんだな・・・と。
もう少ししたら職業体験実習が始まる。とりあえず草むしりをすることだけはわかったけど、どんなことをするのか、どんな人に会えるのか、楽しみだ。



上の写真はクレマチス‘ジェニー’
下の写真はクレマチス‘ジェニー’、‘ブルー・エンジェル’、‘ビオラ’
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移動コーヒーショップ
2015/10/26(Mon)
ブルーエンジェル20120613 (2)「ああ、弁当を使うんだな。ちょっと待ってくれ、すぐ片づけるから。この席が一番涼しいもんな」
「あの、急がないでいいです。僕ヒマだから。あの、今日は売れましたか」
「うん。いい方だよ。夏は戸外じゃ鮮度が落ちやすいから、早めに店じまいしてるんだ」
「今残っている野菜はどうなるんですか? まだ十分売れそうだけど」
「表に商売っ気のないコーヒー屋が来てただろう? あいつにやるのさ。俺が来られない時はあいつが自分の店といっしょに店じまいして、片づけてくれるから相身互いだ」
へええ。
「にいちゃんが社会人になる頃には、あいつもちゃんとしたコーヒー屋になるだろうから、お得意さんになってやってな」

ブルーエンジェル20120820おじいさんだってかなり商売っ気がない方だと思うけど、もしかして遺伝かな。でも親とか孫とかじゃないみたい。全く全然似てないから。僕が「はい、わかりました」と返事をすると、おじいさんは「ありがとう。よろしくな」と手を振りながら去って行った。

お握りと団子2本を食べたら、食べざかり中学生男子としては、まことに程よくお腹のすきまが残っている。さあ、デザートだ。デザートこそお駄賃の正味ってもんだ。もう一度移動販売車へGO。
「おや、君、おかわりかい?」
「はい、いえ、今度はデザートです。ずんだどら焼きとアイスカフェオレください」
「ありがとう。今カフェオレを作るから、ちょっと待ってね」
いそいそって感じで、お兄さんが作業を開始した。


上の写真はクレマチス `ジェニー’と‘ビオラ’と‘ブルー・エンジェル’、
下の写真はクレマチス‘ブルー・エンジェル’
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買物籠をさげて図書館へ
2015/10/25(Sun)
ビオラ20120820 (2)ぼくは早速軒下っていうのか外廊下っていうのかを見て回った。開館前だけど、買い物籠を下げたおばちゃんやエコバッグを持ったおじさんがベンチに腰かけている。更に歩くと、一番日が当らなそうなベンチと机の上に、ざるに乗せた野菜が並んでいるのを発見。料金箱が置いてあって、「1笊100円。でも笊は持っていかないで」と書いてある。
猿の絵も描いてある。猿の頭の右上に濁点が打ってある。オーナーは中高年のオヤジと見た。
軒下めぐりが終わると、庭に移動販売車が到着していた。いい匂いがする。コーヒーだけは販売車の中で淹れているらしい。
ガラス張りのショーケースにはいなりずし、かんぴょう巻き、赤飯のお握り、団子、どら焼きが並び、数は少ないが「朝顔」「鬼灯」といった名札のついた上生菓子も入っている。ケースの上にはカップラーメンとカップとん汁が積んであった。

ビオラ20120603僕は赤飯のおにぎりと、しょうゆ団子とのり巻き団子各1本を買った。
買った食糧がコーヒーやココアとは合わないし、紅茶が苦手なので迷っていると、販売車のお兄さん?おじさん?が、
「そうだよな、今日は暑いから、ラーメンやとん汁は欲しくないよな。中央公民館入口に飲物の自動販売機があるよ」
と教えてくれた。
僕は冷たい麦茶をGETできてありがたかったけど、商売は大丈夫なんだろうか?と少し心配になった。
中央公民館から戻ってくるとき、自分が来た時にはあった「野菜」の幟が無くなっているのに気付いた。さっきの無人販売所に行ってみると、店じまいしているところだった。振り向いたおじいさんと目があっってしまい
「こんにちは」
と挨拶した。


写真はクレマチス `ビオラ’
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DNAのなせる業
2015/10/24(Sat)
ジェニー20130608 (1)お父さんが、お母さんのところで何を話したのかわからないが、お父さんはヨーリー・ナンセンス・ライブラリーへの出入り禁止になった。出入り禁止にしたのはお母さんだ。
意外ななりゆきだったが、僕にとってはちょうどよかった。お父さんがライブラリーで借りたタオルを、僕が返しに行くことになったからだ。
お駄賃がわりに、ライブラリーでお昼を買って食べていいことになっている。職業体験実習中はお弁当と決まっているので、かなり嬉しいお駄賃だ。
『ええと、父がお世話になっています。お借りしたタオルをお返ししに来・・・』ぶつぶつと門の前で口上を練習していたら、
「あら、あなた、もしかして青木茂さんの息子さん?」
と、声を掛けられてしまった。ジョーロを持って立っている、日に焼けたゴマ塩頭のおばあさんだ。

ジェニー20130608 (3)いきなり父の名を出されて、思わず鳩が豆鉄砲顔になってしまった。
「あら驚かせてしまったみたいだね。ボクの顔にDNAで書いてあるんだよ」
「ボクじゃありません。青木実です」
「あ、これは本当に失礼、実くん」
「これ、父から預かったタオルです。ありがとうございました。それと草むしりに行けなくなってすみませんと伝えてくれって言われました」
「わかりました。じゃ、お父さんに、草むしりは城北中学校の実習生にやってもらうから大丈夫って伝えてください」
「はい。あの、ここでご飯食べてきていいって父に言われたんですけど、開館時間前でもいいんですか?」
「庭は誰でもいつでも入っていいので大丈夫。軒下もOKだから、日陰で食べてね」



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丸投げの射手
2015/10/23(Fri)
スプーネリー20150501観念するのは明石さんだけじゃなかった。
「わかりました。1ヶ月後に決断ですね(俺が)」
「ええ。任せるわ(決断から実行まで)」

思うに、ここの館長は丸投げの射手だ。
提案して、提案が動き出したら若干のお手伝いをしようと思っていた仕事を、全部預けて来られて、本当はやりたかったんだと気づいた。これは職員かボランティアかなんて関係ない。人ってのは、自分が当事者だと思うとよく働くものなんだ。
<やられたな>と思うけど、若干の抵抗はしておこう。
「じゃ、1ヶ月後までに妻と相談しておきます」

館長はゆっくりと言った。
「わかった。これから付け届けは奥様にするわ」



写真はクレマチス モンタナ`スプーネリー’
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観念
2015/10/22(Thu)
スプーネリー20150502「あ、いけない、食べ終わっちゃう」
「どうしたんですか」
「アイスひとつ食べる間だけ館長に時間をもらったんです。青木さん、いきなりお願いで済みませんが、リユースの匠を調子に乗せないで欲しいんです」
「え?」
「同じものを二度または二重に使わないと気が済まない館長のせいで、うちのベンチはみんな物入れになっています。もうこれ以上家具の中に物をしまいこまれると、しまわれているものを使いこなせなくなります」
「わかりました。調子に乗せなければいいんですね?」
「はい」
「調子に乗らなくても<もったいない>主義だったら?」
「リユースやむなしです」

スプーネリー20150506 (2)緑川さんは<観念した>ようだ。
俺も二重利用を褒めすぎないように気をつけよう。しかし、きっと使いまわしは止められない。俺自身が、物を使い切らないのは非合理だと思うから。多分緑川さんも。
明石さんのお願いは、観念するための手続きだ。

明石さんといっしょに階下に降りていく。
明石さんがカウンターに入り、館長が出て来る。
「青木さん、私はアーマンディーを植えたかっただけど、あれは誘引が大変で、植える決心がつかなかった。来月青木さんが正会員登録してくれるなら、植えようと思うんだ」
ただし俺は通りすがりのゲストだから、観念する必要はない。必要はないが、アーマンディーを大きく使える機会が他にあるだろうか? モンタナとリレーさせられる舞台が他のどこにある?



写真はクレマチス モンタナ`スプーネリー’
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朗読会
2015/10/21(Wed)
ベノサバイオレシア20150814「館長ご自身用のものには<東雲>と書くお約束になっています」
「そのお約束は最初から?」
「いいえ。開館以来この落とし所にたどり着くまで、紆余曲折がありました。勇気があったりありすぎたりする常連さんも絡んでますから・・・・(ニッコリ)。
それで青木さん、嫌いじゃなかったら白くまくんカップアイスいかがですか?」
「はい。いただきます」
「よかった。じゃ、私も」
明石さんは<館長用>とふたに書いてあるアイスを二つ取りだし、横に座って食べ始めた。アイスのさじを舐めているときは、気取った話はできないものだ。
「青木さん、黒岩さんに会われましたよね」

ベティコーニング20150814 (3)「はい」
「館長と黒岩さんが二人で朗読する『チャリング・クロス街84番地』は素晴らしいんです」
「もしかして、閲覧席が空になる?」
「ホワイエでやればそうなるでしょう。私はまだ遭遇したことがありません。二人の朗読が突発的にホワイエで発生するのは、なにか伸るか反るかの大勝負があったときらしくて。確かこの前は、うちのブックモービルに居眠り運転のトラックがつっこんだときだったそうです」
「だったらホワイエ以外で聞きたいね。じゃ、明石さんはどこで聞いたの?」
「毎月1日の午後7時から職員の朗読会があります。館長も黒岩さんも別の本を朗読しますが、アンコールをかければ必ず『チャリング・クロス』をやってくれます』



上の写真はクレマチス`ベノサ・バイオレシア’、下の写真はクレマチス`ベティ・コーニング’
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微笑む人
2015/10/20(Tue)
籠口20150804 (1)「館長、城北中学校の職業体験実習の準備、チェックお願いします。青木さんには私から、お茶とお菓子の説明をしますから」
と、階下から声がかかった。
「はーい。ごめんなさい、青木さんちょっとバトンタッチさせてください」
館長はすぐに立ち上がり、エレベータに向かった。エレベータが上がってきて、さっきの声の主が降り、館長が乗った。すれ違いざま、館長は部下に何かささやいた。部下は明るい笑顔で応え、背後でエレベータの扉が閉まったとたん、私に向かってニヤリと笑いかけた。口角を上げたまま、部下は言った。
「お茶の後で下のカウンターにご案内するよう言いつかりました。私、本日早番の明石です。よろしくお願いします」
「あ、青木です。よろしくお願いします」
「存じております」
「?」。

スプーネリー20150502 (1)「すみません。シャワーをお使いになっていらしたとき、館長からいろいろ聞いたんです。それでぜひお話したくて」
「はあ・・・」
「でもまずこちらにいらしてください。フリードリンクコーナーです。常温の水、90度の白湯、85度のコーヒー、85度のほうじ茶、そして氷が出ます。フリードリンクと言いつつかなり不自由なドリンクコーナーだと言われています。カップは隣のシンクの上の棚にあります。シンクの横の冷蔵庫は黒板塗料で塗ってあるから冷蔵庫に見えづらいけど、冷蔵庫です。利用者の皆さんがお弁当や飲み物を入れています。閉館時に残っているものは遅番が処分することになっているので、その点気をつけてください。
で、ここに入っていて<館長用>と書いてあるものは誰が食べてもいいことになっています。



上の写真はクレマチス`踊場’、下の写真はクレマチス モンタナ`スプーネリー’
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運動会 20151005
2015/10/20(Tue)
moblog_d196261b.jpg写真は地区運動会の前日に買った靴です。前日ってところに、やる気の程がうかがえます。

自分の外観を犠牲にして、ただ我が字(あざ)のためだけに、日々体重を蓄えて来たんですのに、いざ鎌倉の綱引き競技では秒殺でした。
渾身の力と全体重をかけて戦ったのに、10秒も持ちこたえられずに負けるとは、まるで悪夢でした。
選手20人の感想は、そろって「嘘だろ?」でした。
しかし、本当の衝撃は翌朝やって来ました。

筋肉痛です。10秒もかからない勝負だったのに筋肉痛になるとは、なんて虚弱体質だ、自分。
ふがいない・・・・。


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ゆるやかなコミュニティ
2015/10/19(Mon)
ロマンチカ20141818 (2)「うちの落語は素人からふたつ目までだから大丈夫。
あの写真の羽織を着た人は三丁目の佐藤さんで、めくりをやってるのが加藤さん。お客の半分が佐藤さんの親兄弟と子どもと友達、後の半分が加藤さんの知り合いと友達」
「わかりました。みなさん佐藤さん加藤さんの関係者ってことですね」
「そうなの、その日は佐藤さんと加藤さんで、うちの一日入場券を30枚買ってくれたわ」
「ほう。じゃ、将棋やかるたは?」
「将棋はね、公民館でクラブ活動している人たちが、棋戦の雰囲気に慣れたいって言ってたから、うちでやってみたらって誘ったんだ。棋戦の雰囲気とはちょっと違ったみたいだけど、度胸つけるにはよかったんじゃないかな。
競技かるたは4軒先の木村さんのお嬢さんが思いついたの。

ビクトリア20150814なにしろ空いていればすぐ貸すから、小さい行事や、とりあえずやってみようっていう、ゆるい行事に向いてるんだね、ここ」
「もしかして、ここで試しにやってみて、上手くいったら公民館のホールを借りようとか、大きな大会を目指している人が発表の練習をするとか、そんな使い方もありですか?」
「ありありおおあり。公民館とは仲良しこよし。閲覧室入口と書庫入口の扉の防音はばっちりだから、なんでも来いよ」
なんだか大道芸も来そうな勢いだな・・・・。
「じゃ、ゲリラ演奏とか、勝手に寸劇とか、手続きなしで始まることはありますか?」
「あるよー。その場合妨音扉を閉めてないから、中にいる人が聞きたくないと判断したら、聞きたくない人が扉を閉める。
ホントに面白かったり、いい演奏だったリすると、書庫や閲覧室から人が集まって来る」
 

上の写真はクレマチス`ロマンチカ’、下の写真はクレマチス`ジェニー’
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公共図書館にできない企画
2015/10/18(Sun)
ベノサバイオレシア20150824円筒形のサニタリールームは結構狭い。こんな容積で自由にふるまえるのは、旭山動物園のアザラシくらいだろう。幸いドアは壁から引き出すタイプで、可動域が広い。ドアを開け放ってシャワーカーテンをきっちり閉めてシャワーを使う。カーテンだけなら手や足が当たっても痛くない。
階下からマエストロがでかい声で呼ぶ。
「青木さーん。5分後に上がってっていーいー?」
「りょうかーい」
これが家庭なら、音抜けがいいのは便利な一面かもしれない。

「あの茶色い箱、シャワー使用中はサニタリールームから出させてもらいましたが、床を拭いてまた入れておきました。あれ、紙製なんですね。大丈夫でしょうか?」
「選挙ポスター貼付け用のボードと同じ材質だから大丈夫。

ベノサバイオレシア20110619 (2)普段はたたんでおけば邪魔にならないんだけど、シャワーはめったに使わないから、ついつい箱型のままにしちゃうのよ」
「サニタリールームのドアは底辺が床より高くなってましたね。排水の工夫ですか?」
「ふふふふ。それはね、ドラム缶風呂を入れたとき、水があふれてもいいようにしてみました~」
「もしかして、9月1日の行事というのは防災関係の行事ですか?」
「その通り。うちはね、日ごろお世話になってる町立図書館や公民館と企画がかぶらないように、公立ではやれないことをやるんです。今回は泊まり込みで、避難所生活体験です」
「そうですか。興味深いですね。あれ? でも、落語とか将棋とか、中央公民館の企画にはないんですか?」
俺はわざとホワイトボードの写真に目を向けながら言った。


写真はクレマチス`ベノサ・バイオレシア’
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プレ・アーマンディー会談
2015/10/17(Sat)
ミス東京20150814 (3)8時から10時までチャッチャチャッチャとクレマチスの枯れた下葉切りをした。もちろん、枯れ枝も見つければ切った。ここの庭番は花殻切りを最優先でやってたんだろう。果球はほとんどできていなかった。だから俺がすることは枯葉の除去と草むしりだ。
草は今むしっても行事までにまた伸びるから次回回し。今はひたすらチャッチャチャッチャと鋏を鳴らす。
比較的涼しい日であっても、2時間動けば汗びっしょりだ。ナンセンスライブラリーは午後1時開館だから、中央公民館のトイレを借りて着替えようかなと門に向かった。門から、駅の方から歩いてくる館長が見えた。
「おはようございます。青木さん、どこに行くの? トイレ? 用事が済んだらすぐ帰ってきてね、アーマンディーのことで相談があるから」
おばあちゃんには恥じらいというものがないな。

ミス東京20150806大小の用のことを往来からでかい声で言われると、こっちがギョッとする。しかし、アーマンディーのことは俺も気になっていた。
公民館から急いで戻ってきて、話しかけた。
「お待たせしましたマエストロ。アーマンディーは・・・」
「それより青木さん、汗だくでしょう? 和室の奥のシャワー使ってみて。それから話しましょう。こっちこっち。開館前で、お客さんがいないから、今なら水音を気にしなくていいわ。ドア開放でもいいわよ、換気扇は特別ハイパワーなの」
マエストロはどうしてもあのサニタリールームを論評されたいらしい。そしてそれが済まないとアーマンディーの話も何の話も進まないらしい。
面倒な通過儀礼だが、前回はおっかなびっくりで覗いたところを、館長の御墨つきでゆっくり見せていただけると思えば、それもまたよし。シャワーをお借りするとしよう。


写真はクレマチス`ミス東京’
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家庭の事情
2015/10/16(Fri)
ミス東京20150814 (5)娘も激しく興味を持ったようだったが、決して娘と張りあったわけではなかったんだが、俺は翌日もナンセンスライブラリーに行くことになった。雨が降りそうな曇天だったからだ。猛暑が続く昨今、雨が降る直前とか、小雨がふったり止んだりの日以外、園芸作業可能日はない。幸い、ナンセンスライブラリーは軒が深い。余程強い雨にならなければ、軒の内側から作業できる。
8月1日に妻が入院、3日が手術だった。不幸中の幸いだが、8月は仕事が閑散期なので、他の月よりは休みやすい。1日から12日まで有給休暇をとり、13日から20日まで夏季休暇をとり、21日から31日までまた給休暇をとってあった。
妻の手術が、いわゆる「開けてみなければわからない」式のものだったので、良性だった場合の入院予定日数分休みを取った。悪性だった場合は、9月から介護休暇を取るつもりだったが、幸い、良性だった。

ミス東京20150814 (6)俺は何に感謝していいのかわからない心境だった。人のためになることは、それが妻子の世話をしながらできることだったらなんだってやろうというハイテンションだった。
そんなわけで、昨日の今日だったが、部活に行く息子を送り出し、洗濯機を回し、娘に干すのを託して出てきた。
息子は卵かけご飯と野菜たっぷりみそ汁だけで、文句を言わない。弁当は梅干しの握り飯(男の掌サイズ)2つと、魚肉ソーセージ1本ときゅうり1本。俺のおさんどんの3日目に、部室にマヨネーズのボトルを置いておくからキュウリには何も添えなくていいと、息子が断ってきた。弁当用の小袋マヨネーズを欠かさずに包みに入れるのはなかなか困難なので、英断に感謝だ。
しかしいろいろ我慢しているところが不憫で、握り飯の梅干しは息子好みの高いものを買った。おっと脱線してしまった。ナンセンスライブラリーの話だった。


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息子の都合
2015/10/15(Thu)
ミス東京20150814 (4)ある日部活から帰って来たら、リビングのテーブルに、姉が何か広げて見ていた。ヨーリーナンセンス・・・・?
「姉ちゃん、俺にも見せて!」
「実、破かないでよ」
姉ちゃんが母ちゃんみたいな口ぶりで何か言うのは気に入らないが、今は無視だ。

俺は職業体験実習でヨーリーナンセンスライブラリーに割り振られてる。死活問題だ。死活問題の割には部活優先で、まだ見学に行ってないが。
夏休み最後の3日間が僕らの実習の日。実習がこの施設に当たると、みんなより夏休みが3日短くなる。みんなの実習期間に入院していたとか、試合で県外に行っていたとかいう事情がないのに、この施設実習に当たるのは、不運の最高到達点だ。

ミス東京20150814 (6)姉ちゃんからひったくるように借りたライブラリーマップ。
舐めるように見たが、トイレの記載がない。なんて変な図書館。
舐めるように見たら、このマップの改訂者が城北中学校職業体験チームになっているのを発見。
俺たちはいったい実習で何をするんだ?

やっぱりいっぺん見ておくべきだった。部活にかまけて偵察を怠ったのを後悔する。だがしかし、実習の下見で姉ちゃんや父ちゃんも行かない日に行きたい、そこが男子中学生の苦労なところ。
「実、悪いけど明日、お父さんが今日借りたバスタオルをナンセンス・ライブラリーに返してきて来てくれないか。お父さんは行けないし、美咲は用があるっていうんだ」
時の氏神渡りに舟天の配剤雨霰だ。


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父と娘
2015/10/14(Wed)
白馬20150502 (3)お父さんがお見舞いから帰って来るなり、
「ただいまー。美咲、美咲いる? お、美咲。英語好きだったよな。<サニタリー>ってなんだ? サニタリールームって、女性専用じゃないのか?」と矢継ぎ早に聞いてきた。
「やだなあ、お父さん。サニタリーは<衛生的>ってことだよ。サニタリールームはトイレ・浴室・洗面所の全部かな」
英語の問題として聞かれたからよかったけど、父親からいきなりこんなこと聞かれたら、なんでもかまわず持ってるものを投げつけたかも知れない。お父さん、危ない橋を渡ったね。
「そうか、よかった。俺今日、サニタリールームって書いてある所に入ったんだけど、女性専用の部屋かなと思って、慌てて出てきたんだ。入ったって犯罪じゃないんだな?」
「うん。女性用または女性の使用中でさえなければ」

白馬20150510 (3)「見てくれ。これなんだけどさ、今日ここに行ったんだ」
お父さんが広げたのは、ライブラリーマップ。マップというタイトルだけど、いわゆる図書館案内。
どうやらお父さんは、庭のクレマチスが見たくて私設図書館の庭に入り込み、そこの館長だか庭番だかの人と意気投合。図書館の中に入れてもらったのに、書庫も閲覧室も見ないで帰って来たらしい。
どんな本があって、どんな雑誌があったか一つも見ずに、フリーペーパーコーナーに何があったか縷々語るなんて信じられない。
でも確かに楽しそうな図書館だから、今度行ってみようと思う。図書館マップを見ているだけで疑問符がいっぱいわいてくる。何しろ、「12歳未満の入場お断り」というのがいい。R12の図書館って、どんな「大人の」図書館なんだろう?


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エントランス
2015/10/13(Tue)
白馬20150510 (6)通ってみると、出入口付近は、エントランスというにはちょっと狭いけど、玄関というのはちょっと違うなという、微妙な広さ。エレベータの箱が素通しなので奥行き感があるのがミソなんだと思う。1日券の販売機があるところ以外、東側の壁いっぱいに、帆布で作ったウォールポケットがかかっている。ポケットのサイズはA4で、そこにフリーペーパーが入っている。
外から見ると生活感がないのに、妙な生活感が出たものだ。多分このウォールポケット、図書館の専門用品じゃなくて、汎用なんだろうと思う。
ポケット(クリアビニール部分)にはテープライター製のシールテープが貼ってあった。緑のテープには「ご自由にお持ちください」、黄色のテープには「見本品:注文は(090-000-0000)へ」と印字がある。見本品は和装本で、綴じ方や表紙の和紙がいろいろだ。本を売るのではなく、製本技術を売っているらしい。

白馬20150505 (2)帰る前にもう一度カウンターに向かって礼すると、黒岩さんが見るともなくこちらを見ていたのだろう、すぐに目が合って、会釈を返してくれた。

なんだか面白いことになってきた。ここは知る人ぞ知る施設なのかもしれない。家に帰って高3の娘と中2の息子に話をするのが楽しみだ。
門を出るとき、先刻看板を見たのは門柱。帰りにはもう一本の門柱の脇に、招き猫が置かれている認めた。台座に製作:石川石材店とある。
招き猫の手(前足)の甲には穴が空いていて、そこに小さい幟の柄が通してある。招き猫の持っている幟には< 「和紙葉書」館内販売中 >と書いてあった。


そしてこの黒御影石の招き猫、首にリボンを巻いてネームプレートをつけている。
名札に書いてある名前は、・・・<ミー>だった。



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ホワイエ
2015/10/12(Mon)
フォンドメモリーズ20131002 (1)「ホクホクではなくホカホカなんですね」
いい奴じゃないか。そう思ってあらためて顔を見てしまった。沢村一樹の甘いマスクに塩を足したような男だ。
「失礼しました。私は副館長の黒岩です。館長からこれをクレマさんに、いえ青木さんでしたね。青木さんに差しあげるよう託っております。1カ月有効のゲスト会員カードです。」
「いや、俺はただの通りすがりだから、会員とか結構です」
「恐縮です。無理でなければ9月1日の防災行事まで、1回でも2回でもいいので、庭仕事を手伝っていただきたいのです。館長は『毎日オープンガーデンだけど、カードがあれば入館してシャワーも使っていただけるから』と申しておりました」
「つまりそれはボランティア園芸活動のための入場定期券ということ?」
「そういう使用法もありますね」(ここでニッコリ)。

フォンドメモリーズ20120627ゲスト会員と正会員で違うのは期間だけですから、入場の他、貸出・予約・リクエストなど、正会員と土曜に使用していただけます。新会員用ライブラリーマップもお付けしますね」
「館長によろしくって言われた意味がよくわかりました。9月1日まで、お手伝いしますよ」
「よかった。ヘルプ・ミーだけでは、どうにも回って行きませんから、助かります。では会員登録票に記入してください」
滞りなく手続きが終わると、
「うちの入館ゲートは駅の改札と同じ仕組みです。このカードには本日の入館記録がありませんから、本日だけ、壁際のゲートからお帰りください」
そう言って黒岩さんはカウンター内のスイッチを押した。壁際のバーがすっと開いた。入場口と退場口の通路幅は70cm程だが、壁際の通路だけは幅1mくらいある。これなら車椅子でも通りやすいだろうと思う。



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図書館戦争 ~BOOK OF MEMORIES~
2015/10/12(Mon)
ガウラ20151010 (2)録画してあったテレビドラマ「図書館戦争 ~BOOK OF MEMORIES~」を見ました。
このストーリーで、聴覚障害の少女を、健聴者の役者が演じているのは残念なことです。障害があっても、ひとりの女の子として愛されることを望んだ少女。その役を、聴覚障害の役者が演じられなったことが、残念です。


このドラマ作りの現場がユニバーサルな環境であるなら、わざわざ役作りに困難を感じる健聴者を採用する必要はないはずです。聴覚障害のある役者が、現実社会と同じ比率でドラマでも活躍する日が、早く来ますように。


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秋のクレマチス
2015/10/11(Sun)
マダムジュリアコレボン20151010 (2)マダムジュリアコレボン20151010 (1)マダム・ジュリア・コレボンの三番花が咲いています。蕾の数からして、多分三番花の数はつばなれしないで終わるでしょう。
でも、一度に咲くのは2・3輪ですが、一度に咲かないからこそ、長い期間、庭に深紅を点してくれそうです。
秋なんだなあ・・・。

ハーモニー20151010ルーテル20151010マトカシェドリスカ20151010大輪系ではハーモニーとルーテルが各一輪咲いています。

秋分の日を過ぎてから咲いた花は、花殻摘みをしていません。今年は果球も見て見たいと思って。右はマトカ・シェドリスカ。まだ花殻と果球の中間です。


ガウラ20151010 (1)クレマチス以外では今ガウラが花盛り。ピンクは4株あるのですが徒長したら刈り込むをくり返して、200円くらいの苗が半年でここまでに。
しかし「まあまあ見られる」のはガウラだけ。勝手に生えたコスモスは2mにもなって、根元近くで分岐した脇枝が倒れまくっています。草丈30vmくらいにしかならないマリーゴールドは株ごと倒れています。
「もうイヤっ」て逃げ出したくなるくらい、あちこちそちこち倒れています。倒れたコスモスは切り取り、倒れ伏したマリーゴールは倒したまま、その辺にレンゲの種をばらまきました。来年はどうなることやら・・・・。




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ヨーリーショップ
2015/10/11(Sun)
HFヤング20150505 (1)あいさつなしで帰ってしまうという手もあったが、煙のように消えるのは人生の最後だけでいい。帰るときは館長か他の職員に挨拶して行こう。俺はエレベータを室内側に降りて、カウンターに向かった。
入場時にちらっと見た時は自動貸出返却機しか気付かなかったが、その手前にサイドテーブルのようなものがあるのが目に入った。いかにも素人が作った、手漉き和紙葉書がならべてある。<残暑見舞いを書きませんか?/1枚100円(52円切手込)>というポップが立ててあり、台の隅っこには貯金箱のような料金箱。小さいテーブルだけど、無人販売所でしたか。

カウンターの職員と目があったので
「こんにちは。今日は館長さんにお世話になりました」
と、挨拶した。

HFヤング20150509 (13)「こんにちは。呉間さんですね、こちらこそ、館長がお世話になりました」
「クレマ、じゃなくて青木ですけど、クレマでもいいです。あの、和紙葉書を作っているのはどんな人ですか?」
「3軒先の小学6年生です。牛乳パックで葉書を作って館長に売り込んできました」
「へえ。小学生の面倒を見てるんですね」
「いいえ。面倒は見ていません。あのテーブルも持ち込みだし、ポップはお姉さんの手作り、場所代も1日100円頂いています」
1日100円って、高いのか安いのかよくわからんが、コスト計算は大切だ。
「ご本人には業者パスを渡していますから、1日に何回も来て葉書を並べ直していますが、ご家族が一週間で7回1日券を買って売れ行きを見に来てくれるので、私どもはホカホカでございます」



写真はクレマチス`H・F・ヤング’
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冬咲きクレマチスのジングル・ベル開花
2015/10/10(Sat)
ジングルベル20151010 (1)ジングルベル20151010 (3)ジングルベル20151010 (2)








シルホサ系のジングル・ベルが咲いていました。気が付いたら咲いていて、今年も正確な開花日は不明です。
他のクレマチスが寂れて来るときに咲くから、ついつい見逃してしまいます<(_ _)>

ジングルベル20151010 (4)ジングルベル20151010 (5)冬咲き系は日枝が移植失敗、フレックルスとアンスンエンシスが立ち枯れで消えてなくなっています。
あまり我が家と相性がよくないのかなと思います.
でも、(安売りの)機会があったら日枝は買い直そうかな・・・・。



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ありのままの私/安冨歩
2015/10/10(Sat)
ファッションは女物が好きで、女性装が落ち着く。自意識は女性で、昔から女性の友達の方がしっくりくる。
恋愛の対象は女性で、性器を女性化したいと思ったことはない。オネエ言葉は使わないという著者。
性同一性障害の障害という言葉が、男性の体を持ったまま女性装で暮らしたい人、身体的性別を変えずに同性を愛する人を圧迫するという指摘には、その通りだと思います。
生まれ持った体のまま、同性のパートナーを持つことは許さない。体にメスを入れるなら許す、というのは非道でしょう。
それにしても、『異性装は本人の自由』で通る東京大学という職場の、揺るぎない学問への信頼よ。真理は我らを自由にする、ということですかね。


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サニタリー
2015/10/10(Sat)
マトカシェドリスカ20150502ホワイトボード(ロッカーの裏側に貼ったホワイトボードシートだが)の隣は、また半透明の仕切りがあって進めない。半透明だから仕切りの向こうにカーテンがかかっているのが見える。カーテンの向こうは見えない。職員ロッカー方に入口があるのかもしれないと思う。俺の頭の中で、マエストロがおいでおいでをしていた。

ロッカーコーナーと和室の間に仕切りはなく、誰でもロッカー前を通れる構造になっている。
ロッカーと壁の間を通って行ってみると、カーテンが少し開いている。カーテンレールから<サニタリー>という案内札が下がっていた。
え?トイレ? と驚いたが、人が入っていないのは明らかだったから、開きかけのカーテンを全開してみた。

マトカシェドリスカ20150505一応「失礼します」と言いながら開けてみたのだが、カーテンはシャワーカーテンだった。フックにかけてあるシャワーヘッドも見える。しかし
円筒の床の真ん中に人が座れるくらい大きな茶色の箱が置いてあり、この箱をカーテンの外に出さないとシャワーは使えない。普段は使用しないシャワー室を物置にしているのかな。しかしあのリユースの匠が無駄な空間を作るだろうか?
よく見ると、換気扇の反対側にガラス扉つきの吊り棚がある。吊り棚に入っているのは・・・・、バスタオル、おむつ、生理用品。
しまった。ここは女子の領分だったか。すぐ、すぐに退散だ。
シャシャッとカーテンを閉め、和室に帰って来てから考えた。もしかしてあの茶色い箱は棚の中身を出すときの踏み台だろうか?
しかし追及は後にしよう。俺は小心ものだから、危うきに近づくのはやぶさかである。



写真はクレマチス‘マトカ・シェドリスカ’
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飛び出す和室
2015/10/09(Fri)
フラウミキコ20150509 (1)ホワイトボードに書いてあったのは日直だけだったが、貼ってあるものがいっぱいある。主に写真である。3人が写っている同じ写真が3枚あったりするから、ご自由にお持ちください状態なのかもしれない。

囲碁や将棋、かるたに花札、落語会。練習や、普段の楽しみは今ここにいる和室で、観客つきの試合はホワイエで。
落語会は、いつもの和室に高座を作り、カーテンも壁も全開にして、観客席をホワイエにしつらえるパターンだった。
そうだ。壁を全開だ。応接コーナーの背後壁は屋内シャッターだった。壁に見えたのは、シャッターに掲示板用コルクシートをドーンと貼りつけてあったからだ。
俺の脳内マエストロの肖像画がドヤ顔になった。高笑いの幻聴も聞こえて来そうだ。

マトカシェドリスカ20150502 (5)しかし、落語は演者1人に対して観客30人くらいだからそこそこ盛況だが、他の行事は・・・・。
たとえば畳ユニットをホワイエに持ち出して、かるたの競技をしている写真があった。畳上で対戦をし、観客が取り囲んで見ている。<筑坂高校かるた部OB><日鷹高校かるた部OB>という幟が立っている。選手と審判と読手、観客を合わせて20人くらい。控えの選手もいることを考えると、純粋な観客は5人からせいぜい10人と見た。
囲碁対局も将棋対局も、何枚かの写真を見ると、選手が時計係や記録係を兼ねて、交代で務めているのがわかる。囲碁と将棋の両方の写真に顔を出している人だっている。これは、10人ぐらいのグループ活動で、純粋な観客は0人かもしれない。
ふむふむ。このかるた競技と、囲碁・将棋の対局について、今度マエストロにあったら話を振ってみよう。俺はいつのまにか自分の口角が上がっているのに気づいた。



青紫の花はフラウ・ミキコ、ピンクの筋が入った白い花はマトカ・シェドリスカ。
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和室
2015/10/08(Thu)
フラウミキコ20150505館長が、ニッコリ笑って席を立った。「ごゆっくり。毎日は無理でも、また来てください」と。

せっかくだから見学しようと立ちあがり、最初に目に入ったのは休憩室だった。
マエストロは休憩室と言っていたが、<和室>というプレートがかかっている。半透明の折戸の持ち手のそばには「病人安静時以外開放」とラベルが貼ってあったから遠慮なく入ってみた。後から分かったが、このライブラリーの内部のドアはすべて開放が標準で、素材はシースルーなのだった。
ドアを一歩入った瞬間、「これが和室?」と思わず頭の中のマエストロに突っ込んでしまった。
畳収納ユニット(高床式ユニット畳)の組み合わせで三畳分ほどの畳面を作っただけで、周囲は普通の床。まるで畳の島だ。

フラウミキコ20150509 (2)そしてなんだかカーテンがおかしい。窓枠の縦サイズよりずっと長いし、やけにボリュームがある。
視線が天井まで動いた時、謎が解けた。天井に取り付けられたカーテンレールが田の字を画いているのだ。無論丸っこい田の字だ。畳島全体をカーテンで覆ったり、このささやかな和室を、2つに分けることも、カーテンの使用で可能らしい。
どこかでマエストロがニヤリと笑っている気がした。

和室の西側には3人用ロッカーが3台並んで背面を見せている。もちろん、ただの背面ではない。薄型マグネットホワイトボードシートの一番でかいのが貼り付けてある。
俺が見たときホワイトボードシートに書いてあったのは「20XX年8月10日(月) 早番: 遅番: 車番: 庭番: ヘルプ:○」だけだった。

よく見ると●はマグネットで、名前シールが貼ってある。庭番●は<東雲>で、○はミーだった。


写真はクレマチス‘フラウ・ミキコ’、白っぽい花もクレマチスで、‘ルイーズ・ロウ’
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伊礼智の「小さな家」70のレシピ/伊礼智
2015/10/07(Wed)
小さい家はそれだけでエコだけど、快適でなければわざわざ新しい家を建てる意味がない。だから、「小さくて」「快適」の両立を目指すこの本は大変面白い。
機能的なキッチンならあんまり動かなくて済むし、廊下がなければ廊下の掃除をしなくていいし、ものぐさな私は広い家になんか住めない気持ちになってきました。
俵屋旅館は建築家にとってものすごく疲れる旅館。勉強になりすぎて思わず実測しまくっちゃうから寝る暇がない・・・という話は「むべなるかな」と笑ってしまいました。

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