大奥 (第1巻)/よしながふみ
![]() 第1回の読了は2008年の暮れだったような気がします。 その後この本は友人の間を経巡っていて、記憶がおぼろになったところで映画「大奥」公開。 あわてて原作の行方を捜し、このほど再読しました。 男だけが罹り、致死率の高い赤面疱瘡で人口比が男1:女4になった江戸。将軍は女。御台も側室も男。大奥に侍る美男は800人。 男女比が極端に傾いているところから、ただの男女役割逆転ではない物語が生まれます。 一夫一妻で家族が成り立つのは富裕階級だけ。貧しい家に生まれた貴重な男は、種馬として一夜幾らで他家に貸し出されます。どんな男が借りられるかは女の持つ金次第。最下層の女は最下層の売笑夫を時間で買うほかありません。 同情心から貧しい女と只で寝る水野は、きれいな顔と丈夫な体を持つ男。幼なじみと恋仲だけれど、彼女は水野よりずっと富裕な家の男を婿に迎えるよう期待されている大店の娘。 添えない定めと身を引いて、大奥に飛び込む水野でしたが・・・。 男の絶対数が少ないため、夫を持ちようがない女たちが、生きがいのために子どもだけは欲しいと願うから、『子種』のある男性は生殖の道具。人格より、きれいな顔や丈夫な体のDNAが重要というわけです。 きれいな顔と丈夫な体が売りの水野ですが、そこは大奥。選りすぐられた男たちの中で、きれいな顔と丈夫な体だけでは渡りきれません。 気骨を見せて出世して将軍の閨に入ることになります。この気骨と幼なじみを思う純情が、将軍の琴線に触れて、どんでん返し。 まあ、確かに、水野はいい男です。読者は彼の人柄に肩入れしたくなるでしょう。 だけど本当の立役者は将軍吉宗。苦労人で、人の心の機微がわかるいい女です。 腹心の久道を使って大奥に大ナタをを振るうところなど、人の心(ここでは藤波の保身)がわかる君主ならではの頭の切れを見せています。ああ吉宗の今後の活躍が楽しみじゃ。 大長編のお膳立てのうまさ引きのうまさ、そのなかできっちり水野という魅力あるキャラクターの物語を描き切るうまさ。星5つ! 衆道に馴染まない水野が、大奥のお針子に接吻した後、「減るもんじゃなし。許せ、お信」と心のうちで幼なじみに語りかけます。お信は「いや減った。減ったよ、旦那」とプンスカ怒ってました。私の好きなシーンです。 ところでこのシーンのお信が、「林檎でダイエット (花とゆめCOMICS)」の鴫子に似ていると思うのは私だけですか? ![]() ![]() |
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