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三浦しをん「悶絶スパイラル」
2008 / 02 / 28 ( Thu ) 13:58:46
悶絶するほどおもしろく、読み終わるやいなや著者のブログを見にいき、一時間も読んでしまいました。

悶絶スパイラル
三浦しをん著. -- 太田出版, 2008

あんまり感心したので長きを厭わずに引用します。
 私が思うに、披露宴のスピーチで避けるべきなのは、
一、子どもに関すること
二、夫唱婦随をほのめかすこと
三、これからは社会のために的展開
 である。
 子どもは結婚しなくてもできる。男が提唱することに従うしかできない女は妻になるべきではないし、男が提唱することに従うしかできない女じゃないと家庭生活を営めないような男は夫になるべきではない。独身であっても社会に貢献するのが当然であって、そういう心構えがなかったものは結婚したって社会に貢献などしない。

いやまったくだ。
三の見解はちょっと厳しいかな。結婚を機に社会を意識し、自分に出来ることを考える晩成型もいると思うぞ。

ただスピーチで避けるべきなのはその通りです。これを機に社会貢献を期待するというのは(言いたければ)新郎新婦に言えばいいことで、「この人たちいい大人なのに今まで社会のことなんか考えてきませんでした」と他の客に公開するのは招かれた客として非礼ですから。

他に、お父さんの話が可笑しくてなりませんでした。
柳沢教授と漆原教授の中間を行く感じ。娘にこんなことを書かれて、大学でのお立場は? といらぬ心配をしてしまいます。
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紅玉いづき「ミミズクと夜の王」
2008 / 02 / 28 ( Thu ) 13:55:30
randokuさんに教えてもらった物語。裏庭 (梨木香歩)辺境警備(紫堂恭子)を思い出しました・・・・。

ミミズクと夜の王 (電撃文庫 こ 10-1)
紅玉いづき[著]. -- メディアワークス, 2007.

掌に乗ってしまう文庫本が異世界への入口。
ひさびさに、そんな感じを受けました。
泥にまみれる奴隷として受けた名がミミズ。自分で一字を足してミミズクと変名した少女は、自分がミミズクだからという理由で、夜の王をフクロウと呼ぶ。
そんなふうに呼び名がキイになるところで裏庭 (梨木香歩)を思い出したらしいです。
潔い(ということは度量があるということ)王と、妻をこよなく愛する騎士と、神官の心得のある妻などが登場し、それがみんな沽券に拘泥しない(つまり器が大きい)いい人だというところに辺境警備(紫堂恭子)の世界を感じたようです。どうも。

もちろん作品はオリジナルであり、知的能力が低い?と思われたミミズクが、あまりにつらい境遇ゆえに感覚を鈍磨させ思考を停止していたのだと分かってくる筋立てには、もう「してやられた」気分。気づいたときには物語世界にどっぷりです。
どんなにつらい記憶でも、記憶を奪われるのはさらにつらいというミミズク。手を引き、背を押してやりたくなるミミズク。

続編が待たれますです。

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読書(小説・詩歌) TB:0 CM:0 admin page top↑
梅沢富美男「梅沢さんちの台所」
2008 / 02 / 28 ( Thu ) 13:50:29
現実的でおいしそうな料理が並んでいます。ほんとうに愛と食欲で作ってるんだなーって感じ。
なお、私の言う「現実的」とは「簡単そう」と同義です(笑)

梅沢さんちの台所 梅沢富美男愛情レシピ集
梅沢富美男 /日東書院本社 2007/12出版

料理には愛情がこもっているというのが素直に読めます。料理で女を篭絡しようなんて姑息な魂胆じゃないのがよくわかる。
僕が作る立場になったとき、ふと気づいたんです。毎日おいしい料理を食べていた、あぁ、僕はずっと愛情をそそいでもらっていたんだなって。
 今度は僕が家族に愛情をそそぐ番です。ありがたいことに、家族はいつも「おいしい」と言ってたべてくれるんです。
という「はじめに」の文章がとてもいい。
自分ももっともっと感謝して、おいしいって言いながらごはんを食べようと思います。

今夜のごはん、なにかなあ。

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読書(生活・産業) TB:0 CM:0 admin page top↑
漫画と文学
2008 / 02 / 28 ( Thu ) 13:48:47
読売新聞にピアニッシモが紹介されていました。世に小説が原作の漫画が増えてきたと思っていたら、ついに出た小説のコミカライズ雑誌。

「文庫になるのを待ってから読もう」じゃなく「コミックになってから読もう」時代の到来か??



そういえばさくらももこさんが自分のエッセイを漫画化していました。文学と漫画の境界が低くなると、こういう例も増えてくるでしょうね。

  

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日記 TB:0 CM:0 admin page top↑
「珍名さんのいろいろ」「読みにくい名前はなぜ増えたか」
2008 / 02 / 28 ( Thu ) 13:45:14
まずは姓の部。ハンコやさんが集めた珍しい姓の数々。新風舎の本ですが、おもしろいので図書館でどうぞ。

珍名さんのいろいろ ハンコやさんが案内する名字の不思議 森下恒博 /新風舎 2007/10出版


お次は名の部。
苗字と違って(文字の制約はあるが)ほぼ親の自由に選べる名前なのに、なんだってこんな読みにくい名前が多いのか。個性的な名前はいいけど、人に読んでもらえなくては名前の用をなさないですよ。これから親になる人は、この本を読んで冷静になってもらいたいです。

読みにくい名前はなぜ増えたか(歴史文化ライブラリー ; 236)佐藤稔著. -- 吉川弘文館, 2007.

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読書(社会科学) TB:0 CM:0 admin page top↑
腐女「腐女子の品格」他
2008 / 02 / 28 ( Thu ) 13:42:09
なぜ地元図書館は、この本を入れて、「結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日」を入れてくれないのか。

腐女/腐女子の品格制作委員会 /リブレ出版 2008/01出版
あなたは今「彼氏がいない」んじゃなくて
「彼氏は必要じゃない」のよ

という腐女子の先輩の科白は、ある人たちについては真理だろうなと思いました。

それにしても、地元図書館はオタクに優しいです。「ぼく、オタリーマン。」も「ぼく、オタリーマン。2」も入っています。「すーちゃん」は入ってないのに。

ぐだぐだ言ってないで結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日

をリクエストすればいいんでしょうが、リクエストを「マンガだから」という理由で断られるのは一度だけで充分です。

ちなみに以前この理由で断られたのは勤務地図書館。私たちは繁殖している (5)でした。1巻から4巻まで入っているのに5巻目をこの理由で断られ「資料費削減で選書基準が変わったのだろう」としか考えられませんでした。

以来、図書館に入っていないマンガは入るのを待ってからリクエストするようにしています。(入らないときは諦めます)
今日の早川さんは図書館を当てにせずに買っちゃったけど、結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日は買おうかどうか迷うところです。あーあ、迷う。

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読書(コミック) TB:0 CM:0 admin page top↑
近江哲史「図書館でこんにちは」
2008 / 02 / 27 ( Wed ) 14:04:34
図書館のヘビーユーザーが高じて、ついに図書館運営を受託するNPOを作っちゃった?!

図書館でこんにちは―本に出会い、人に出会える楽しい場所へ (日外選書Fontana)
近江哲史著
. 日外アソシエーツ, 2007.

概ね面白い本で、ときどき膝を打ちながら読んだのですが、あとがきに引っかかってしまいました。それまできれいな風景に見とれながら歩いてきたのに、最後に犬の糞を踏んで散歩が台無しに終わったときのような気持ちです。
「君は図書館を使うばかりか、今度は運営に関わりたいとまで言っているようだな」と彼は驚き顔で言った。
「君だって美味しい料理を味わえば、こんな料理を作ってみたいという気持ちにならないかね。(ご婦人ならなおさらだ。)図書館をいろいろ使ってみると、ああ、さらにここをこうしたらもっといいはずだ、とか、いっそのこと市民で、利用者で、われわれの手でもっと使いやすい図書館をやってみたい、という気になるんだよ」

このやり取りの中で、なんでわざわざ括弧に入れてまで(ご婦人ならなおさらだ。)と書かなきゃならないんでしょう。

私は美味しいものをたべたら「また食べたい」と思うのみ、ついぞ自分で作りたいとは思ったことがない女です。著者にとって、こんな女はご婦人ではないということなんでしょう。不愉快です。

著者はフェミコードに鈍感な男ですが、いいことも言っています。参考になる本です。
でも著者は嫌いです。

テーマ:図書館 - ジャンル:本・雑誌


読書(総記・哲学・歴史) TB:0 CM:0 admin page top↑
きむらゆういち「小説 あらしのよるに」
2008 / 02 / 27 ( Wed ) 14:02:26
これは「ロミオとジュリエット」の上を行く究極の純愛小説です。二人が同性だから友情の物語だなんて、だまされるのは子どもだけ(?)です。

小説 あらしのよるに
きむらゆういち著. -- 小学館, 2006

二人は秘密の恋に落ち、周囲が見えなくなるほど幸せ。秘密が露見し、群れにいられなくなった後はさながら道行き。
そこにはもう帰ることを心配しなくていいなくていい、ずっといっしょにいられるんだという喜びがあって、まさしく蜜月の心地。
相手を群れから引き離し、本来の生活環境を失わせてしまったことへの悔悟があったり、生活習慣の違いと疲れから二人の間の言葉数が極端に減って、孤独と将来の不安を感じるのもまた人生。

人が、いつパートナー(の時間を愛を労働)をエサにしてしまうか分からない存在であると考えると、ガブの苦悩は他所事ではないと思います。知らず知らず相手を食いつぶす悲劇は、ありふれすぎていて悲劇と認識されませんが。

ラストは紅涙をしぼります。(絵本とも映画とも違う結末です)既に絵本や映画を見た人も、ぜひ小説を読んでみてください。


映画  絵本
映画を見たときは友情物語としか思いませんでした。絵本ではほとんど何も感じなかったし。自分は映像を読むのが下手なのかなと思います。

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学


読書(小説・詩歌) TB:0 CM:0 admin page top↑
対訳絵本「給食番長」と「焼かれた魚」
2008 / 02 / 24 ( Sun ) 15:10:11
まずは博多弁バイリンガル絵本。
元気のいい絵にテンポのいい科白。日本語が主で博多弁が従なのが残念です。

給食番長 (cub label)
よしながこうたく /長崎出版 2007/06出版


次は「中学生はこれを読め!」で見つけた本。俳句も作る詩人であるところのアーサー・ビナードさんの英訳つき。

焼かれた魚―The Grilled Fish
小熊 秀雄【文】・ビナード,アーサー【英訳】・市川 曜子【画】 /パロル舎 2006/02出版

骨になろうが灰になろうが故郷に帰りたいという気持ちは、故郷を離れたことのない(故郷を意識したことのない)幼児にはわからないでしょう。

地元図書館ではこの絵本を大人向けの本として配架し、分類番号913.6「日本の小説(現代)」を付与しています。芥川龍之介の「杜子春」や「蜘蛛の糸」のようなもので、小説といえば小説だけれどもできれば、宮沢賢治と同じ童話のコーナーに置いてもらいたいと思います。

テーマ:子どもの本 - ジャンル:本・雑誌


読書(児童書) TB:0 CM:0 admin page top↑
映画「陰日向に咲く」
2008 / 02 / 24 ( Sun ) 15:06:05
映画「陰日向に咲く」を観て来ました。

原作は読んでいません。「映画を見たからもう読まなくていいや」という気持ちになっています。

偶然に次ぐ偶然で、9人の人生がこれでもかというくらいからみあって、フィナーレ。
偶然の重なる物語を「ありえない。うそっぽい」という理由で嫌う人もいるけれど、私は与しません。
小説や映画くらい、都合のいい偶然があったっていいじゃないかと思うから。
最後の頃は「じゃあこの人は? この人は誰の何に当たるの?」とパズルの最後のピースをはめていくような気持ちで見ていました。

みんなぴったりはまって、カタルシスのある幕切れ。
ハッピーエンドのお話を観たい人におススメです。

テーマ:邦画 - ジャンル:映画


映画 TB:0 CM:0 admin page top↑
本間正人「モンスター・ペアレント」
2008 / 02 / 22 ( Fri ) 15:14:48
 学校に怒鳴り込んでくるのは「モンスター・ペアレント」。病院で不当な要求を繰り返すのが「モンスター・ペイシェント」で、店先でしつこく商品に難癖をつける人は「モンスター・カスタマー」。
クレーマーという呼び方をしないそのわけは?



一部の人がモンスターという「人種」になるのではなく、誰もがモンスターという「状態」になりえるのだと著者はいいます。

ストレスフルなこの世の中で、だれでもモンスターになる可能性があるのだから、小中学校や病院など「来るものを選べない」人たちはモンスター対策訓練をしておいた方がいいという話は身につまされました。

図書館や公民館も考えておいた方がいいですね・・・・。

テーマ:子育て・教育 - ジャンル:学校・教育


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朽木 祥「彼岸花はきつねのかんざし」
2008 / 02 / 22 ( Fri ) 15:12:14
―戦争の悲しみとは、あたりまえにあるやさしい時間が、とつぜん失われることかもしれない。
という著者の思いがそのまま、一冊の本になったようです。
<結末を知ってもかまわない方だけ、続きをどうぞ・・・>

彼岸花はきつねのかんざし (学研の新・創作シリーズ)
朽木 祥 (著), ささめや ゆき (イラスト) 学習研究社 (2008/01)

ピカドンを受けて昏倒したかの子が意識をとりもどしたとき、もうピカドンの日から一月以上が過ぎていて、コウさんもねえやも再会かなわぬ人になっていました。

それは確かにこの本の結末なのだけれど、味わうべきは往時の夢。往時のうつつ。おきつねさまのいる暮らし。

ひめじょおんの花のなかで、はためくこぎつねのしっぽ。
きつねと遊んで帰りが遅くなったとき、迎えに来てくれたねえやの、少し荒れた手。
すぐそこにあったはずの、二度と戻らぬものの手触り・・・・。

過去が少しずつ思い出に変わることを、平和と呼ぶのだと思います。
何月何日何時何分に突然、ここから先が現実でそれ以前のことは過去の思い出でしかないと、他者によって決められてしまうことの異常を思います。



テーマ:子どもの本 - ジャンル:本・雑誌


読書(児童書) TB:0 CM:0 admin page top↑
アリス カイパース「冷蔵庫のうえの人生」
2008 / 02 / 21 ( Thu ) 15:16:12
冷蔵庫に貼ったメモだけで、母と娘の愛と別れが綴られる稀有な本です。



冷蔵庫に貼った買物メモにさえ、「大好きよ、ママ」「愛してるわ、クレア」といった言葉が入るお国柄でなければ、この本は出来なかったでしょう。

母と娘の二人暮らし。母は多忙な産婦人科の医師だから、冷蔵庫のメモには買物だけでなくいろいろなことが綴られます。

母親の体の異常、闘病、手術、再発。娘の交友、特にボーイフレンドとのいざこざ、親子喧嘩、母への励まし・・・・。

特に母親の、言うに言えない気持ち。冷蔵庫に貼るメモにだからこそ書けた、不安な気持ちが、切なく迫ってきます。
メモ1枚に書いた量の文章で1ページが終わるので、全部読むのに30分かからないくらいですが、少ない行数の中に、細やかな愛と愛ゆえに豊かな時間がこもっています。

世に書簡体小説というジャンルがあるけれど、これはメモ体小説の嚆矢かもしれません。

テーマ:闘病記 - ジャンル:本・雑誌


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石川文子「おとなを休もう」
2008 / 02 / 20 ( Wed ) 15:19:08
国語の教科書って一体何社が作っているのかしら。これは過去40年間に出版された300冊のこくご教科書からのアンソロジー。

通勤電車で油断しきって読んでいたら、ぶわっと涙が噴き出して困った「サーカスのライオン」

笑いかけて、笑う前に胸が痛んだ「ソメコとオニ」。
いい子だからひとりで遊びなさいとばかり言われ、誰にも遊んでもらえないソメコ。やっと見つけた遊び相手は野原で出会ったオニでした。
数日後、ソメコとの遊びに疲れはてたオニから、ソメコのおとうに手紙が届きます。「ソメコを迎えに来てくれ。ソメコを連れ帰ってくれたら、車一杯の金を届けてやるから」と。

教科書で「ソメコとオニ」を読んだ子どもは、可笑しかったかしら、悲しかったかしら。


収録作品は以下の通り。あなたは泣きます?笑います?
 内容: おおきな木 / シェル・シルヴァスタイン原作 ; 本田錦一郎訳 ; モチモチの木 / 斎藤隆介著 ; 白いぼうし ; おにたのぼうし / あまんきみこ著 ; ワニのおじいさんのたからもの / 川崎洋著 ; ソメコとオニ / 斎藤隆介著 ; 島ひきおに / 山下明生著 ; 一つの花 / 今西祐行著 ; アディ・ニハァスの英雄 / H.クランダー , W.レスロー著 ; 渡辺茂男訳 ; つりばしわたれ / 長崎源之助著 ; 花さき山 / 斎藤隆介著 ; やまんばのにしき / 松谷みよ子著 ; チワンのにしき / 君島久子訳 ; サーカスのライオン / 川村たかし著 ; 青銅のライオン / 瀬尾七重著 ; 月の輪グマ / 椋鳩十著 ; はまひるがおの小さな海 / 今西祐行著 ; うぐいすの宿 / 光村図書出版編集部編 ; 手ぶくろを買いに ; ごんぎつね / 新美南吉著
注記: 発売: メディアパル ; 昭和40-平成16年年度使用分の小学3、4年生のこくご」教科書の中から採用頻度の順位あり

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宮成なみ「奇跡のごはん」
2008 / 02 / 17 ( Sun ) 21:30:13
16歳で難病「結節性動脈周囲炎」が発症し、社会復帰断念を医師に宣告された著者は、母の独自の「食事療法」で奇跡的に回復した。奇跡を起こした食事の内容とは何か-。難病記でない、食の可能性を描いた一冊。
という


宮成なみ/東洋経済新報社 (2007/08)


本当のところ、治療法のない生まれつきの病気が治ったという事実はありません。しかし、骸骨のように痩せ、学校にも行けなかった著者が、社会生活に復帰できるまでに回復したのは事実です。

腎機能が著しく低下した著者に、母親が編み出した「腎臓に負担をかけない」料理の数々。この食事は、人工透析を受けずに暮らせた奇跡の7年間をくれました。

現在著者は3日に5時間の人工透析を受けながら、料理研究家として働いています。
母が「食事を作ること」にこめていた愛情をちゃんと受け止め、難病に負けず、生きる幸せを見出した著者に知性を感じます。子どもを生み育てる体力のない彼女を支えた恋人(のち夫)とその家族にも敬意を覚えます。

しかし

著者は料理を女性だけのものにしています。「愛する人を幸せにするレシピ」という意味合いを「オトコをメロメロにするレシピ」と言い表わしてはばからない感性には、、、ついていけません。

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中村哲「医者、用水路を拓く」
2008 / 02 / 17 ( Sun ) 15:31:46
巨費と膨大な人力(人数・時間)をかけた用水路が危機に瀕したとき、著者を呼ぶ息子の声がします。

医者、用水路を拓く―アフガンの大地から世界の虚構に挑む
中村 哲 石風社 (2007/12)

「おとうさん。おとうさん」。
たった2週間の看とりで、息子を喪った父が、どんな思いでそれを聞いたのか・・・。

医者である父がメスを置き、重機のハンドルを握る日々。
夭折した息子はどんな思いで父を見守っていたか・・・。

涙が出ると先が読めないので、目頭を抑えっぱなしで読みました。

息子の死、育ての母(15歳年上の姉)の死について、たいした行数は費やされていないけれど、日本の家族が絶えず中村氏を支えていたのがわかります。
言い尽くせない恩義のある義兄に、なすべきことをなさぬまま日本を後にする中村氏。
待っている人が日本とアフガニスタンにいて、どちらにも中村哲でなければできないことがあるなんて、なんと難儀で、難儀で、幸せなこと。

用水路が完成したとき、アフガンの民はいいます。
「ドクターナカムラをこの地に寄こした神に感謝する」と。
「そうだ。私に感謝することはない、私にこの仕事をさせた神が偉大なのだ」と中村氏は思います。

地元の民はイスラム教徒。中村氏はクリスチャン。

砂漠を沃野に変える用水路。そこに遊ぶ子どもたちが「異教徒にもいい人がいる」と覚えていてくれますように・・・・・。

テーマ:海外ボランティア - ジャンル:福祉・ボランティア


読書(自然科学) TB:0 CM:0 admin page top↑
エミリー ヨッフェ「犬はきらい?」
2008 / 02 / 17 ( Sun ) 15:28:55
アメリカ流のユーモア表現で書かれており「それはまるで、何々をこれこれするようなものだ」という比喩表現にクスリまたはニヤリとさせられるところが多々ありました。

犬はきらい? わたしを変えたダメ犬サーシャの物語
エミリー ヨッフェ /早川書房 (2007/10/10)

その発露がいかにバカっぽくても、飼い主に対する忠実な愛情こそ犬の面目。マーリー―世界一おバカな犬だってそうでした。
なのにここんちのサーシャと来たら、呼べば必ず逃げ出すという不忠義者。次々しでかす不始末と粗相にもかかわらず、どうして著者は犬バカになっていくのか。

どうぞそこんとこをお楽しみください。
猫が好きで、家族に押し切られてしぶしぶ犬を飼うことになった著者が、同居困難な犬に惚れこむ過程は至上の恋愛に似ています。

テーマ:ゴールデン・レトリーバーとの生活 - ジャンル:ペット


読書(生活・産業) TB:0 CM:0 admin page top↑
角田光代ほか「いとしさの王国へ : 文学的少女漫画讀本」
2008 / 02 / 17 ( Sun ) 15:26:23
しをんさん、いつもよりおとなしく語っています。
 漫画は去年くらいまでかなり読んでいました。いまはそんなに多くない。月に二十から三十冊くらい。あ、多いですか?
というトボケた出だし。抑えても抑えても炸裂してしまうしをんさんでした。


角田 光代,桜井 亜美,野中 柊,柴崎 友香,横森 理香,嶽本 野ばら,狗飼 恭子,三浦 しをん,加藤 千恵
マーブルトロン (2003/05)


分析的な文章もありますが、大半が個人的な「まんがの思い出」を語った本なので、語っている作家さんに興味がないとあんまり面白くないかもしれません。
最終章「文学的少女漫画史」は押えるべきところを押えていて、なつかしく読めました。

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読書(芸術・言語) TB:0 CM:0 admin page top↑
ヒヨコ舎編「本棚」
2008 / 02 / 17 ( Sun ) 15:20:56
他所んちに行ったとき、まず本棚に並ぶ本の背に目が行ってしまう人なら、この本を作った人の気持ちがよくわかるでしょう。

本棚
 ヒヨコ舎 (編集)/アスペクト (2008/1/18)


自分の本棚の写真を撮られた人たちは、自分の脳の中身を撮られているような気がしなかったかしら?
それぞれが自分の蔵書について語っているから、ここに出てきた人たちは別段恥ずかしくないみたい。不思議だ・・・・。
あの人の本棚はおもしろい。
15人分の「あの本棚」大公開。

穂村弘
山本幸久
角田光代
長崎訓子
みうらじゅん
喜国雅彦
大森望
中島らも
金原瑞人
宇野亜喜良
吉野朔実
川上未映子
山崎まどか
石田衣良
桜庭一樹


なにしろ本をたくさん持っているのは翻訳家だと思います。2例(金原瑞人さん・大森望さん)だけなんだけれど、この二人が持っている量があんまりすごいので、つい作家より翻訳家の方が本持ちだと断言したくなってしまいます。

もし仮に『どうしてもこの中の誰かと自分の本棚(中身ごと)を交換しなければならない』という事態になったなら、私は泣く泣く桜庭一樹さんの本棚を選ぶでしょう。(そしてきっと桜庭さんも泣くでしょう)

個人の本棚は個人に固有し、当人の個性と分かちがたいもの。どんな作家の本棚より、自分の本棚の方がいいですよ、そりゃあ。

書斎の達人」も現在リクエスト中です。なんだか最近覗き趣味だな・・・・・。

テーマ:本に関すること - ジャンル:本・雑誌


読書(総記・哲学・歴史) TB:0 CM:0 admin page top↑
映画「L change the WorLd」
2008 / 02 / 16 ( Sat ) 21:36:51
デスノートスピンオフ作品「L change the WorLd」を見てきました。「ありえなーい」の連続で、疲れちゃいました。

「今日からFBIが君たちを守る」と言いながら単独でLのアジトの隠し通路に現れた南原くん。Lに呼ばれないのになんでここに入り込め、Lの顔がわかるのさ。

南原くんが一方通行の道路を逆走したうえ、その辺の市民に対してFBIの身分証を見せて「通せ、通してくれ」というシーンには「おいおい」と言いたくなりました。
(FBIの国外活動は法で禁じられています。日本の路上で自分から身分を公にしてどうするんじゃ)

Kとワタリのつながりが書き込まれていないので、物語の奥行きが浅くなっています。的場も只の守銭奴で人間が薄っぺら。顔にケロイドをつけた意味がわかりません。

映画を見て、なんじゃこりゃと思った人にL change the WorLd
をお薦めします。今回は原作の方がよかったと思います。

テーマ:DEATHNOTE - ジャンル:アニメ・コミック


映画 TB:0 CM:0 admin page top↑
三浦しをん「しをんのしおり」
2008 / 02 / 15 ( Fri ) 21:45:07
しをんさんは親御さんの命名が気に入らないようで、何度も不満を漏らしています。
なんでかなあ。ペンネームにしているくらいだから、心底嫌いなわけじゃないのだとは思いますが。

しをんのしおり (新潮文庫)
三浦しをん/新潮社 (2005/10)

しをんっていい名前だと思います。
小学1年生でも読めて、読みまちがえられることがない。それでいてクマさんやトメさんのように、名前だけで戦前の生まれと推定されるような古さがない。

紫苑の花は姿こそ可憐だけれど、世話なんかしなくても毎年生えてきて、時期になると勝手に咲く丈夫な草です。
紫をん咲き静かなる日の過ぎやすし 水原秋桜子

私も花の名を負う身ですが、親は子がその花のようであれと願うより、その花を愛でるような人であれと願ったものと思っております。

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読書(エッセイ・読物) TB:0 CM:0 admin page top↑
三浦しをん「人生激場」
2008 / 02 / 15 ( Fri ) 21:39:30
しをんさんはクリスマスを目の敵にしているけれど・・・・

人生激場 (新潮文庫)
三浦しをん/新潮社 (2006/07)

父上(「口語訳古事記 完全版」の著者三浦佑之さん)はご自身のサイトに

子どもが小さかった頃は、クリスマスプレゼントを準備したり、気づかれないように枕元に置いたり、けっこう楽しんでいたのですがね。なんせ、わがむすめは、中学生になるまでサンタクロースを信じていて、こいつはアホじゃないかと心配になったほどです。むすこのほうは、どうしてもサンタを捕まえるのだと言って寝ないので困りましたが、今や遠い遠い思い出ですね、なつかしい。

と書いておられましたよ。

サンタを騙られたという心の傷がクリスマス嫌いの源だったりして?

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返却は計画的に
2008 / 02 / 13 ( Wed ) 21:49:45
勤務地図書館の新着本コーナーに「たいがいにせえ」が置いてあって、借りたくなりました。
難儀でござる」と言っていたお方が、「たいがいにせえ」とおっしゃるからにはよほどのことがござったのでございましょう。はて何があらしゃったのか?

しかし、今日だって読みきれなかった「小説 あらしのよるに」を一度返してすぐまた借りた身、これ以上別の本を借り出すのはやめて置きました。It is「たいがいにせえ」です。『返済は計画的に』という消費者金融のコマーシャルが身に沁みます。

二週間しかない貸出期間のうち、スキーで3日も潰してしまったし、まず手元にある本をせっせと読まなくちゃなりません。(2泊3日の旅行だからと文庫本を3冊持っていったのに1冊しか読めませんでした)

予約カードも12冊分書いたまま、まだ図書館に提出していません。既に勤務地と居住地の図書館にそれぞれ10冊以上の予約を入れているからです。

「どうして返せないほど借りるのか」と消費者金融の利用者にたいて対して思っていたけれど、ちょっとわかるような気がしてきました・・・・。

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黒木優子「おうちで和菓子屋さん」
2008 / 02 / 13 ( Wed ) 21:47:44
バレンタインは義理チョコ(今年はフーシェの「オリンポスの煌き」)だけしか買わないので、私は見て楽しむのみですが、

黒木優子 祥伝社 (2003/01)

この本の、チョコきんつばがおいしそう。
焼き鮎など見ると、和菓子は洋菓子よりも造形の楽しみがあるなあと思います。
そして「かわいいっ」と「とぼけた感じ」が同居するのが和菓子の醍醐味かなと思います。丸くてちっちゃくてが基本線だと、どうしてもユーモラスなかわいらしさが出ちゃいます。
見ているだけで幸せだけど、食べればもっと幸せ。
「おうちで和菓子屋さん」ができたらすごく幸せだと思います。


そしてこちらはみどりさんのご紹介。和菓子のほん (たくさんのふしぎ傑作集)

いやはや、美しいこと見事なこと!
見た目に季節感があふれ、命名に詩情があふれ、幸せがこぼれそう・・・・。

西洋の飴菓子(シュガー・アート)に大きさで及びませんが、ねりきりには無限の芸術性が潜んでいると思います。

テーマ:お菓子のレシピ本 - ジャンル:本・雑誌


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スキーに行ってきました
2008 / 02 / 12 ( Tue ) 07:19:28
連休で二泊三日のスキー旅行をしました。スキーで移動したわけではなく、足は走行距離23万キロを記録している自家用車です。 息子は向こう三年は着られるようにスキーウエアを新調したばかりのため、リフトに乗っている姿は、まるでウエアに埋まっているように見えます。 (彼の身長は150cm、ウエアは身長170cm用) 夫のスキーウエアは年代物。子どもが保育園時代に保育園のバザーで500円で買ってそれからずっと着ているというものです。 あちこち穴が開きだしたので、さすがに 「もう新しいのを買ったら?」 と私は言うのですが、 「いいんだ。ウエアは我慢するから、新しいスキー(板)を買わせて」 と夫は言います。 「何言ってんの。スキーはまだ穴が開いてナイじゃない」 と即刻却下。 私のウエアは義妹のお下がり(お上がり?)なのでロハでした。ホクホク。 10年前のデザインですが、サイズがぴったりで穴も空いておらず、目下非の打ち所がありません。 こんないでたちの一家が、スキー場の経営を心配しているとは、仏様でもご存知ありますまい。 20年前の混み具合を知っているわれわれ夫婦。 5分も待たずに乗れるリフトを喜びつつも、「これで利益が出るのか?三連休でこれじゃ、平日は人件費で赤字が出るのでは??」と話しあってしまいました。 息子が成人する頃、スキー産業はどうなっているのでせう・・・・・。

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木崎さと子「緋の城」
2008 / 02 / 09 ( Sat ) 05:02:00
enoさんが挿画を描いた本です。画像イメージがなくて残念。 緋の城
木崎さと子 /新潮社 2002/02出版 カバー絵の女性は、ゆったりとたゆたうような表情ですが、中身のヒロインはいつもイラついています。 ちょっと入っていけませんでした。

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田代秀敏「中国に人民元はない 」
2008 / 02 / 09 ( Sat ) 04:25:07
北京大学てなもんや留学記以来何冊の中国本を読んできたことか・・・。つまらなかった本は記事にしなかったので読んだ冊数は定かじゃないけれど、間違いなく、この本が一番面白くて分かりやすいです。 中国に人民元はない (文春新書 588)
田代 秀敏 / 文藝春秋 (2007/12) 中国には人民元も市場(しじょう)も定期券もない。 いろいろな「無いもの」を通して中国という国、中国人の国民性を語ります。 個人的経験(見聞)でなく、社会制度や現象から中国人の特性を炙り出す、鮮やかなお手並み。 現象の読み解き(解釈)に間違いがあればとんでもない人間像が描かれるでしょうが、他の本で語られる中国人と印象はそう変わりません。ただ、「そういう社会構造では『明日の百元より今日の十元』になるでしょうね」とか、「そういう精神風土だから、『家の便器はピッカピカだけど公衆便所は目も当てられないくらい汚す』のね」と、すごく納得が行きます。 中国には定期券がない。←誰も買わないから必要ない←「お金をこれだけ出せば、一カ月先までも電車に乗っていいですよ」なんて契約は、明日反古にされるかもわからない。今日大切な金を余分に払えるかという心情←猫の目のように変わる政策。身内(親しい友人)以外は信用できない社会 荒っぽく書くとこんな具合。 個人や企業の土地所有が認められておらず、土地の使用権(期限付き)が認められるだけ。それもいつ政府に保障無しで取り上げられるかわからない国で、日本と同じ資本主義が機能するはずがないなあと思います。

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吉岡健「中国人に絶対負けない交渉術」
2008 / 02 / 07 ( Thu ) 01:11:15
中国企業に「してやられた」話はいくらでもあり、日本の常識と中国の常識は違うから気をつけろという一般論も掃いて捨てるほどあるのに、「このように気をつけて会社を守れ」とか、「こうすればやられっ放しで泣き寝入りすることがない」という具体的なことを、なんで誰も書いてくれないんじゃ・・・・という不満が沸点に達したところ、現れたのがこの本。 中国人に絶対負けない交渉術
吉岡 健 / 草思社 (2007/01/26) これから中国で商売をしようとか合弁企業を作ろうとか思うなら資本規模の大小を問わず、この本を読むべきです。読まずに損をしても私は知らない。 読んだ上で損をしても責任を持てませんが、とにかくもう私は言いましたから「なんであのときこの本の存在を教えてくれなかったんだ」とだけは責めないでね。

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内田春菊「最近、蝶々は…」
2008 / 02 / 06 ( Wed ) 21:53:11
どうしてこれが新潮文庫に入ったのでしょう。映画なら絶対R18(18歳未満お断り)だし、だいたい映画になりえないだろうエロ具合です。
内田 春菊 / 新潮社 (2007/10)
誰がこの作品を新潮文庫に引っ張ってきたのか、編集者の話をぜひ聞きたいと思います。

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映画「歓喜の歌」
2008 / 02 / 06 ( Wed ) 06:22:48
映画「歓喜の歌」を見てきました。 原作は志の輔らくごのおもちかえりDVD 1 「歓喜の歌2007」
です。 面白かった! ダブルブッキングの被害者(2団体)と加害者(予約受付係)が協力奮戦して大団円に至る奇跡?の物語。 一見利害が一致しなそうな人たちが協力して、全体の利益を求める、というのはいかにも日本人の夢です。 いい夢を見せてもらいました。 しかし、洋服のリフォーム業のおかみさんが袖丈詰めを片方残して公演に駆けつけるのは、あまりにもウソっぽい。残りの片袖は文化会館の課長が担当するけれど・・・。 このへんを原作はどう処理しているのか、原作を聞いてみようと思います。

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