引き出しの中の家/朽木 祥
![]() 花明り(花を愛し植物を助ける小人)と少女の交流。 小人ものは先行作品が多々ありますが、類想ではないと思います。 ファンタジーの要素を排してリアルに書こうとした風の靴より、小人が出てくるこちらの方が入りこみやすいのはなぜ? 私がヨットより植物を好きだから?? 不満が残るのは、「恐れ」が書かれていないこと。どうして花明りは自分たちにとっては巨人である人間にやすやすと姿を見せたり、逡巡なしで言葉を交わしたりするのかしら。花明りの世界にも大人はいるだろうに、人間界へ突っ込んで行く子どもの花明りを止めないのはなぜ? 異界の人に対する恐れのない物語は「薄い」気がしてしまいます。 ![]() ![]() テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学 |
風の靴/朽木 祥
![]() 「かはたれ―散在ガ池の河童猫 (福音館創作童話シリーズ)」と「たそかれ 不知の物語 (福音館創作童話シリーズ)」に打ちのめされていたせいで、その後の作品に対して期待が大きすぎるのか、ちょっとがっかり気味です。 これは児童書としていい本なんだろうと思います。 大人の私には、大学のヨット部元キャプテンとの出会いなど、都合のよすぎる展開に思えてしまいます。 ![]() ![]() |
わたしの母さん / 菊地澄子作
![]() 高子の両親は知的障害者。高子はそれを知らずに育ちますが、4年生になったとき、母さんは4歳の弟を背負い、2本のおさげに赤いリボンをつけて授業参観にやってきます。
わたしの母さん ![]() その上母さんは黒板に書かれた割り算を引き算と誤解して「先生、それ、まちがってます」と声をあげるのでした。 自分の母が、明らかに他の母親たちと違っていて、割り算の記号も知らないと気づいたときの、高子の胸の痛み。かわいそうになあと思います。 どの子もいつかは親の能力の限界を知ります。親にも限界があることを知るのが教育の一里塚だといえるかもしれません。知的能力の限界も経済的な限界も健康上の限界もあるのだから、高子だけが特別ではないんだと私は思いますが、4年生の高子の胸の痛みを減ずることは出来ないでしょう。 しかし、高子は自分で大事なものを探し出します。知的限界があっても、その限界を超えて大事なものを。 巻頭に掲げられていた「母さん、私の母さんで ありがとう」と結ばれる詩が、親の限界を知ったすべての子どもに、いつかは共感されるならいいなあ。 ![]() ![]() |
ロマンティック・ストーリーズ / 赤木かん子編
![]() 図書館でまんがを見つけると、なにやらうれしい。これなんか、一冊に二編のまんがが収録されてて、さらにうれしい。
今 市子,アイザック アシモフ,ロバート・F. ヤング,坂田 靖子,O. ヘンリ Amazonランキング:181339位 Amazonおすすめ度: ![]() 世に名高き今市子(いまいちこ)さんの作品を初めて読みました。伝聞でイメージしていたとおり、波津彬子さんに似た作風です。 イマイチなんて謙遜した名を持ちながら、この方、ほんとに恐いことを恐ーーーーく描くのがお上手。ぞっとしました。でもそれも一瞬で、ほっとさせたりクスリと笑わせたり、緩急のつけかたが天才的です。 もう一人のまんが界代表は坂田靖子さん。だれにも真似できない個性でぶっちぎります。 O・ヘンリやアイザック・アシモフも健闘していますが、日本のまんがって本当に高水準なんだなと実感させてくれるためにいるみたい。大人にも充分楽しめるアンソロジーです。 |
解放 / 赤木かん子編
![]() 図書館でまんがを見つけると、なんだかうれしい。それが川原泉ならなおさら。
川原 泉,レイ・ブラッドベリ,赤木 かん子,ルーシー・モード・モンゴメリ,岡村 花子,ロバート・F. ヤング,伊藤 典夫,宇野 利泰 Amazonランキング:272528位 Amazonおすすめ度: ![]() 川原教授は「森には真理が落ちている」で出演し、モンゴメリが「めいめい自分の言葉で」を繰り出し、ヤングは「ピネロピの贈りもの」、ブラッドべりが「アンクル・エナー」と来るならば、確かに開放感溢れる一冊です。 それにしても川原教授、『真理が我らを自由にする Η ΑΛΗΘΕΙΑ ΕΛΕΥΘΕΡΩΣΕI ΥΜΑΣ』を意識したタイトルでしょうか? |